
軽く聴いても良い。じっくり聴き込んでも良い。書きたいこと,褒めちぎりたいことは山ほどあるが,良いの一言で『フェアリー・テイル』批評を終えてしまいたいくらいにいい! 要は『フェアリー・テイル』は“実に出来すぎた”名盤なのである。
当時まだ無名だったピアニストのデビューCDにして,超一流のピアニストでも“生涯に一度有るか無いか”の考え得る最高に豪華な共演者=ビル・エヴァンス・トリオのベーシスト,エディ・ゴメスとマーク・ジョンソン。そしてルイス・ナッシュとピーター・アースキンのドラム。とどめはテナー・サックスのマイケル・ブレッカーである。
このGRPからのご祝儀に,足がすくむでもなく実力をいかんなく発揮している。いや,エディ・ゴメスとマーク・ジョンソンを従えた“仮想”ビル・エヴァンス・トリオのリーダーとして“風格”さえ漂わせている。
いや〜,すんごい新人がいたものだ。木住野佳子は上原ひろみ以上の“肝っ玉娘”なのであろう。
『フェアリー・テイル』は,ジャズ・ピアノの王道である。「メロディは美しく,アドリブは激しく,最後はスイング」である。ビル・エヴァンスの音楽に通じる“中身は濃いのに敷居は低い?”の王道である。
エヴァンス派を自認する木住野佳子だが,それはインタープレイの構築方法やフレーズに関してのお話。
木住野佳子のピアノは,ビル・エヴァンスという“フィルター”から出力されてはいるのだが,彼女のルーツはロックやポップスである。ビル・エヴァンスにはない,都会的でお洒落で生命感のある非内省的なメロディが,ほんの一瞬顔を出す。女性的な繊細で大甘なタッチなのに,ツンツンと尖がっている。
木住野佳子は,いつでもどかでも,心の奥底でビル・エヴァンス“している”のだ。
『フェアリー・テイル』のハイライトは,意外にも?マイケル・ブレッカーとの“静かなバトル”である。
メラメラと青白い炎が立ち昇っている。実に美しい。2人の心の共鳴はビル・エヴァンスとスコット・ラファロのインタープレイそのものである。

ギラギラしているのにメロディアスで美しい。ブルース,ファンク,グルーヴとは最も遠いところで鳴っている。ジャズを聴き続けている人であっても,この透明感とはなかなか出会えないと思う。
『フェアリー・テイル』は,最初から最後まで細部に至るまで制作チームの狙い通り。完璧である。木住野佳子が手にした幸運の奇跡に管理人からも感謝を表する。
01. Beatiful Love
02. Fairy Tale
03. The Island
04. Someday My Prince Will Come
05. Funkallero
06. Stella By Starlight
07. Only Trust Your Heart
08. You Make Me Feel Brand New
09. Lafite '82
10. Gone
11. With A Little Song
(GRP/GRP 1995年発売/MVCR-30001)
(ライナーノーツ/漆崎丈,木住野佳子)
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】
(ライナーノーツ/漆崎丈,木住野佳子)
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】
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