BLUE IN RED-1 “オーケストレーション”和泉宏隆と“ハイパー・サックス・プレイヤー”本田雅人を擁した,T−スクェアの最終作=『BLUE IN RED』(以下『ブルー・イン・レッド』)。

 『ブルー・イン・レッド』をこのように紹介すると“感慨深げ”に思えるかもしれないが,しかし結果,最終作となっただけで「リアル・タイムな追っかけ」ファンとしては,単純に“T−スクェアの最新作”と受け止めたに過ぎない。

 『ブルー・イン・レッド』の“ファースト・インプレッション”は「またスクェアが変わったな」だった。リバーブの少ないデッドな音。サンプリング,シーケンサー,ループの多用。もしかしてヒップホップ? 『ブルー・イン・レッド』には“危うい香り”が漂っていた。

 『ブルー・イン・レッド』の真髄は“不良なスクェア”である。でも完全には不良になれない,なりきれていない。隠そうにも隠しきれない“T−スクェアらしさ”がサウンドの節々に表われている。
 そう。『ブルー・イン・レッド』は,スクェア流の“新しくて古い音”! 流行の音を取り入れながらも最終的に“王道のスクェア・サウンド”に仕立て上げるバランス感覚は流石である。 

 そんな“流行と伝統”な『ブルー・イン・レッド』は,1曲1曲の中にも“流行と伝統”なドラマがある。
 まずは何と言っても『ブルー・イン・レッド』と来れば,良くも悪くも【BAD BOYS & GOOD GIRLS】の“衝撃”! 【BAD BOYS & GOOD GIRLS】=第2の「メガリス・ショック」! 実際は安藤まさひろ作なのだが,イメージとしては「本田雅人がまたしてもやってくれています」な“本田色”の名演
 ヒップホップ〜ファンキー路線で始まるが,中盤からは,いつも通りのメロディアス(テレビ朝日系「やじうまワイド」の芸能コーナーBGMのノリノリ曲)。エンディングでの“LRの頭ガーン”は【MEGALITH】のエンディングを完全に意識している?

 2曲目の【KNIGHT’S SONG】も“静と動”が混在した壮大なロック・チューン。TVゲ−ムはスルーの管理人は未聴でしたが,原曲は『GRAN TURISMO』のテーマ曲【MOON OVER THE CASTLE】であり,安藤まさひろのソロ『ANDY’S』では曲名が【MOON LIGHT CASTLE】となり,今回の『ブルー・イン・レッド』での曲名【KNIGHT’S SONG】が3パターン目。
 【KNIGHT’S SONG】も,これまた安藤まさひろ作なのに,本田雅人EWIがうなりを上げている。ねっ,温故知新な“流行と伝統”でしょ?

 3曲目以降も“不良なスクェア”が奏でる,安定した“王道のスクェア・サウンド”の名演集。
 管理人的には【MAZE】【TRELA ALEGRE】【FROM THE BOTTOM OF MY HEART】が大のお気に入りです。

 しかし『ブルー・イン・レッド』路線のT−スクェアはもう聴けない。両翼(和泉宏隆本田雅人)がバンドを去り,もはや別の方向に向かうしかなくなった(せめてもう1作。できれば今回が最終作のアナウンス付で録音してくれたなら,きっともっと…)。

 『ブルー・イン・レッド』を聴く限り,和泉宏隆本田雅人の脱退は突然決まったように思う。本田時代のT−スクェアは,7年間メンバー不動の長期政権(和泉宏隆は16年在団!)。この7年間煮詰まることは一度もなかった。まだまだバンドは成長していた。やりたいことも山程あった。やり残し。

BLUE IN RED-2 しかしT−スクェアの活動以上に,2人がソロとしてやりたいことへの興味が上回った。

 和泉宏隆のきっかけは,97年のソロCDFORGOTTEN SAGA』。このピアノ・ソロ・アルバムを転機としてアコースティック・ピアノの世界にドップリ。溢れ出る思い。

 本田雅人も自身のルーツである97年のビッグ・バンドB.B.STATION」を経由してのマルチ活動。ソロ&「FOUR OF A KIND」&「VOICE OF ELEMENTS」。【SAMURAI METROPOLIS】を聴いていると「もう本田雅人にはT−スクェアという籠は小さ過ぎる」を実感しました。有り余る才能。

 和泉さん,本田さん,ご卒業おめでとうございます。本当にありがとうございました。

PS 和泉宏隆本田雅人の脱退発表後に聴き直した『ブルー・イン・レッド』は,初めての『ブルー・イン・レッド』とは違う音がしたことを思い出します( ← 我ながら詩的? )。

  01. BAD BOYS & GOOD GIRLS
  02. KNIGHT'S SONG
  03. ANCHOR'S SHUFFLE
  04. MAZE
  05. TOOI TAIKO
  06. SAMURAI METROPOLIS
  07. カスバの少年
  08. TRELA ALEGRE
  09. FROM THE BOTTOM OF MY HEART

(ソニー/SONY 1997年発売/SRCL3943)

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