![BRASIL-1](https://livedoor.blogimg.jp/adliblog/imgs/4/0/40213687.jpg)
そう。『ブラジール』は,安藤まさひろの“ブラジルへの熱い想い”を形にした,安藤まさひろのソロCD。この位置づけは,聴けば分かる! もはや『ブラジール』に“王道のスクェア・サウンド”の毛色はない。
バンド時代からユニット時代へ…。スクェア・サウンドの激変のキーワードは“脱バンド・サウンド”にある。
松本時代の“最先端フュージョン”の追求は,アクセル全開で大技小技を繰り出しまくってやっとこそ辿り着くことのできる究極の完成度。この音の延長線は安藤まさひろと伊東たけしの選択肢にはない。
安藤まさひろと伊東たけしがユニット結成時に目指した音は,5人では表現できない2人の“盟友”だからこそ奏でられるヒューマン・サウンド! 決め事の少ないフレキシブル感! 完全なる別次元サウンド!
『ブラジール』は“ほのぼの系”である。ヴォーカル,フルート,ソプラノ・サックス,アコースティック・ギターの艶やかな表情に「ええ〜」なのである。
もっと『BRASIL』『BRASIL』しているかと思いきや,肩の力の抜けた爽やかリラックス。スクェアの伝統を保持しながらの完全リセット。ブラジル音楽特有の躍動的なリズムの上をメロディアスなフレーズがどこまでもさわやかに響いていく。
軽快である。耳をさらさら流れていく。これが安藤まさひろの考える“ブラジル”なのであろう。この感覚が管理人にとって最高に興味深い。
『ブラジール』は,常夏の空やそよ風の似合う80年代のLAフュージョンのような音。演奏している全ての人の息遣いが届いてきそうな人間味あふれる音。世知辛い生活の中でも,ホッ,と一息ついてゆったりとした時間を楽しめる。午後3時のコーヒー・タイムに流れていると自然と笑顔がこぼれてしまう。何のあざとさも感じない素朴な音。
ヴォーカル,フルート,ソプラノ・サックス,アコースティック・ギターで始まる前半の『ブラジール』は,スクェア“らしくない”のが最高にいい〜。そして徐々にいつものスクェアへと戻っていく。『ブラジール』後半で炸裂する,ここぞという時のギターとサックスのユニゾンはもはや伝統芸であろう。
『ブラジール』を一枚通して聴き終えた頃には,前半で感じられた違和感は解消。「やっぱりスクェアはこうでなくっちゃ!」を感じてしまう。スクェア・ファンゆえの矛盾に悩んでしまいそう?
![BRASIL-2](https://livedoor.blogimg.jp/adliblog/imgs/6/b/6b7ce66b.jpg)
裏1。特筆すべきは【A FARTHER PLACE】での珍事! 何とT−スクェア史上初,安藤まさひろが演奏していない。【A FARTHER PLACE】のギタリストはトニーニョ・オルタ。
そう。『ブラジール』は“T−スクェアのアイデンティティ”である自身のギターを削ってまでもこだわった80年代のLAフュージョン。これぞ安藤マジック。
裏2。全10曲中8曲が安藤まさひろ作なのに『ブラジール』のハイライトは本田雅人作の【A DISTANCIA】。意外にも本田雅人作編曲に伊東たけしのアルト・サックスがドンピシャリ。“T−スクェアのアイデンティティ”である自身の曲を削ってまでもこだわった80年代のLAフュージョン。これも安藤マジック。
以下,管理人の結論。『ブラジール』批評。
『ブラジール』は“ブラジル音楽命”の安藤まさひろの“理想”のためなら,名ギタリストの安藤まさひろを,名作編曲者の安藤まさひろをも冷徹な耳で判断している。“こだわりのプロ・ミュージシャン”安藤まさひろが,初めてT−スクェアを“私物化”している。T−スクェアの大予算を注ぎ込んで自身の“理想”のソロCDを制作している。いいじゃないか,もっとやっちゃえ,安藤さん。
『ブラジール』での“希薄な”スクェア・サウンドに逆に,安藤まさひろこそ「ミスター・スクェア」を強く実感する。でも星4つかな。やっぱり“濃厚な”スクェア・サウンドが聴きた〜い!
01. A CAMINHO DE CASA -ON MY WAY HOME-
02. DESPEDIDA
03. SEM PARAR
04. TOYS
05. TEMPO DE SER FELIZ
06. SOM SILENCIOSO
07. A DISTANCIA
08. AMANHECER
09. SOFT MADNESS
10. A FARTHER PLACE
(ヴィレッジ/VILLAGE 2001年発売/VRCL-3337)