BLOOD MUSIC-1 32TH『BLOOD MUSIC』(以下『ブラッド・ミュージック』)である。
 このタイトル,そして血色に染め上げられたジャケット・カラーに,T−スクェアの意気込みを感じる。
 テーマはズバリ“ロック・スピリッツ”! どうですかこの入れ込みようったら…。

 『PASSION FLOWER』が「爽やかフュージョンど真ん中」だったので,安藤まさひろの「新作はT−スクェアのロック」宣言を目にして『ブラッド・ミュージック』の発売を凄く楽しみにしていた。メチャメチャ振ってくるんだろうな〜。

 T−スクェアフュージョン・バンド。しかしT−スクェアにはストレートなロックの血が混ざっている。

 【FULL CIRCLE】【BARBARIAN】辺りから芽生え始めたT−スクェアのロック指向。【PRIME】【TRUTH】【BIG CITY】【ARCADIA】などは,並みのロック・バンドを蹴散らす圧巻のハード・ロック! 本田時代を突き抜けて『スウィート・アンド・ジェントル』経由の「T−スクェア・プラス」にまで登り詰めてしまった。

 そんなT−スクェアの「ロック宣言」に興奮しないスクェア・ファンがいないはずはない。
 『ブラッド・ミュージック』。流石である。これは「T−スクェア・プラス」を超えた,スクェア・ロックの代表作である。

 安藤まさひろの“エッジの立った”ギターがうなりを上げている! 『ブラッド・ミュージック』の主役である坂東慧ドラムが“ズドーン”! 坂東慧の8ビートが重い重い。この独特のノリに腰が揺さぶられてしまう。河野啓三オルガンジョン・ロードし,伊東たけしEWIがシャウトしている。
 凄い。凄まじい。ロックの血で濁りまくったスクェア・サウンド。スクェア・サウンドがディストーションしている。これはロックを超えた“プログレ”である。

 うーん。でも何か違う。『ブラッド・ミュージック』は何かが違うんだよな〜。そう。スクェア・ロックにつきものの,いいメロディが欠けている。

BLOOD MUSIC-2 【PRIME】【TRUTH】【BIG CITY】【ARCADIA】の時代は,まず「メロディありき」。メロディアスなハード・ロックがスクェア・ロックだったはず。

 『ブラッド・ミュージック』はその逆か? T−スクェアフュージョン・バンド。まず「ロックありき」はナンセンスだと思う。いい演奏を聴きたいだけなのに,聞く側にも自然と力が入ってしまう。
 『ブラッド・ミュージック』の真実は,メロディアスなハード・ロック改め「歌なしのプログレ」。
 惜しい。ただ,いいメロディだけが欲しかった!

  01. PRINCE VLAD
  02. DON'T PLAY HARD TO GET
  03. REVENGE
  04. ISTANBUL
  05. ANOTHER STORY
  06. REMINISCENCE
  07. SLICK STICK
  08. CIRRUS
  09. AND FOREVER
  10. SAYONARA

(ヴィレッジ/VILLAGE 2006年発売/VRCL-10007)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
★【初回生産限定盤】スリーブ・ジャケット仕様

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