
SALTの同じピアノ・トリオでも『トリオっ!』は,続く「塩谷哲トリオ」名義の『WHEELIN’ AHEAD!』『EARTHEORY』とは骨組みが異なっている。
『トリオっ!』は,ピアノ・トリオ・フォーマットを導入してはいるものの,そこは塩谷哲のソロ名義CD。「ソロ制作の一環としてピアノ・トリオを導入してみました〜」的な,ベーシスト=吉野弘志,ドラマー=山木秀夫との「第一次・塩谷哲トリオ」の結成である。
そう。名手2人を従えた“王様”としての炸裂ぶりに,ありのままの塩谷哲のピアノが顔を出している。
『トリオっ!』でのピアノ・トリオ・フォーマットへの挑戦は【PASSAGE】で実を結んでいる。
ん? 【PASSAGE】は『トリオっ!』全13曲中唯一のピアノ・ソロ・トラック。ピアノ・トリオへのチャレンジがSALTのソロ・ピアノに影響を与えている。
SALTがピアノを“鳴らしている”。これ程奥深いピアノは以前のSALTにはなかった表情だ。覚醒である。SALTは“ジャズ・ピアニスト”として【PASSAGE】で“一皮剥けた”と思っている。
「SALT BAND」として,そして「FOUR OF A KIND」としての成功体験を“シンプルにして究極のフォーマット”と称されるピアノ・トリオで表現してみたい。
そう。『トリオっ!』は“ジャズ・ピアニスト”塩谷哲としての胸の高鳴り=自然の欲求がモチベーションとして突き抜けている。
塩谷哲トリオの結成。そこで悩むはベーシストとドラマーの人選。塩谷哲のお眼鏡にかなったのが吉野弘志と山木秀夫である。
『トリオっ!』は,塩谷哲が塩谷哲であるためのピアノ・トリオ。吉野弘志と山木秀夫のサポートを受けたSALTのピアノは“水を得た魚”。
スケール無限大の塩谷哲トリオの音楽を“リードする”のが吉野弘志。吉野弘志の“雄大なベース・サウンド”が時にクリティカルなピアノの響きをジャズ・ピアノの音世界へと先導する。
ソロイストとしての吉野弘志の力量が圧倒的。管理人はひそかに,塩谷哲は吉野弘志のベースに“嫉妬”を覚えたのではないか,と思っている。【SPEAK OUR LANGUAGE?】【OVERJOYED】でのベース・ソロが秀逸である。
スケール無限大の塩谷哲トリオの音楽を“後押しする”のが山木秀夫。山木秀夫の“生きたドラム・サウンド”が時にクリティカルなピアノの響きをジャズ・ピアノの音世界へと引き戻す。
ソロイストとしての山木秀夫の力量が圧倒的。管理人はひそかに,塩谷哲は山木秀夫のドラムに“嫉妬”を覚えたのではないか,と思っている。【AFTERSCENT】【STORM FRONT】でのドラム・ソロが秀逸である。

塩谷哲のオールラウンダーとしての才能が,あくまでもソロイストとしてのSALTの個性を生かす選曲と構築美として聴き分ける事ができる。
そう。ベーシストに井上陽介を迎えて“トライアングルなユニットとしての塩谷哲トリオ”を追求した「第二次・塩谷哲トリオ」と比較して,塩谷哲ソロ名義の『トリオっ!』に面白みと愛着を感じる。
PS1 アルバム・タイトル『トリオっ!』の『っ!』の部分に塩谷哲の意気込みが表現されている!?
PS2 『トリオっ!』のCDジャケットのハイセンス。塩谷哲のマルチな才能は音楽を超えたアートなのか!?
01. Speak Our Language?
02. Afterscent
03. Running an Errand
04. Overjoyed
05. Do You Still Care?
06. Ruby Baby
07. Running More Errands
08. Storm Front
09. Sicilienne
10. Flying Shoes
11. Passage
12. Afterscent Dub-Mix
13. Puff the Magic Dragon
(ビクター/JVC 2003年発売/VICJ-61026)