『FIRST DIMENSION』は「二重の意味で」DIMENSIONのデビューCDではない。『FIRST DIMENSION』の『FIRST』とはファースト・フルCDの意。一つには公式の事実として,DIMENSIONのデビューCDは「ル・マン24時間耐久レース」のオリジナル・サウンド・トラック『LE MANS』である。
しかしながらDIMENSIONファンの間では,周知の事実として『FIRST DIMENSION』が,DIMENSIONのデビューCDとして通っている。
( これにはこうなるそれなりの理由というものがありまして…。DIMENSIONのCDタイトルは定番化された『○○TH DIMENSION』シリーズ。『FIRST DIMENSION』から『15TH DIMENSION』までの15枚は,途中,サブタイトルが付け加わえられながらもパターンが継続されていました。しかし通算16枚目の『MELODY 〜WALTZ FOR FOREST〜』で『○○TH DIMENSION』の掟が破られました。でもDIMENSIONファンは『MELODY 〜WALTZ FOR FOREST〜』を16TH。17枚目の『LONELINESS』を17THと便宜上呼んでいましたが,20枚目からは『○○TH DIMENSION』の変化形で『20TH』と枚数のみの表記に戻りました )
このように,公式のファースト・フルCDであり,ファンの間でもファーストとして受け入れられている『FIRST DIMENSION』を管理人は,デビューCDとは捉えていない。
管理人の中での,DIMENSIONの真のデビューCDは『SECOND DIMENSION』である。これは音楽的に間違いない。DIMENSIONの大ファンとしてこの持論は撤回しない(理由は『SECOND DIMENSION』批評を参照のこと)。
そう。公式のデビューCD『LE MANS』と実質のデビューCD『SECOND DIMENSION』に挟まれた『FIRST DIMENSION』は“孤高の存在”である。
DIMENSIONの全ディスコグラフィーを眺めても『FIRST DIMENSION』に肩を並べるアルバムはない。『FIRST DIMENSION』はDIMENSION唯一の「王道フュージョン」なのである。素晴らしい異端である。何か新しいものが創造される前の過渡期ならではの大傑作の誕生である。
そもそもDIMENSIONの結成は,ギターの増崎孝司のソロCD『SPEAKS』に遡る。 『SPEAKS』の録音メンバーは,キーボードの小野塚晃,サックスの勝田一樹,ベース=青木智仁,ドラム=渡嘉敷佑一。
そう。『FIRST DIMENSION』は,名手5人によるセッションの続編であってバンド・サウンドではない。暴言と承知で述べると『FIRST DIMENSION』のヒーローは青木智仁であって,増崎孝司+小野塚晃+勝田一樹の3人組ユニット=DIMENSIONとしての個性は薄い。
『FIRST DIMENSION』の基本は『SPEAKS』『LE MANS』に続く増崎孝司のギター・フュージョンなのに「フィーチャリング・青木智仁」のチョッパー・ベースに耳ダンボ。
“スーパー・ベーシスト”青木智仁をサポートとしたのは増崎孝司のボンミスだったのか? NO。恐らく増崎孝司がDIMENSIONへのメンバー入りを要請したとしても青木智仁は首を縦には振らなかったと思う。
理由はDIMENSIONのT−スクェア志向。これがカシオペア志向なら青木智仁もDIMENSION入りしていたかも? 要はソフトで綺麗で優等生な爽やかギターがメロディアス。
そう思わせるくらいに『FIRST DIMENSION』は,スクェアと酷似のポップでロックでメロディアスな「王道フュージョン」目白押し&名曲揃い。
【GO UP STREAM】【TAKE IT EASY】【NIGHT VOICES】【OCEAN EXPRESS】【SELFCONTROL】【NOIZ】【RAINY】【薫風】は,このどれもがDIMENSIONを代表する“現役の”名演だと思う。
さて,DIMENSIONらしからぬ“爽やかギター・フュージョン”路線の最高峰『FIRST DIMENSION』。『FIRST DIMENSION』は中身も「最高&異端」であるが『FIRST DIMENSION』の外見=CDジャケットも「最高&異端」である。深海をイメージしたブルー・バックに「ファースト」=「1」の文字を形作った女体の図。く〜っ,悪趣味ですが最高です。スクェアのファースト『LUCKY SUMMER LADY』を意識的に超えようとしている?
最後に番外編の理由として『FIRST DIMENSION』を,DIMENSIONのデビューCDとして捉えにくく思うのは楽曲と演奏の完成度の高さに尽きる。これが新人の音とはにわかに信じ難く感じたものだ。
それもそのはず。増崎孝司にしても,小野塚晃と勝田一樹にしても,既に第一線で活躍中の売れっ子たち。きっと「ビーイング系」に限らず,たくさんの演奏を知らず知らずに耳にしている。技術とセンスの高さが身に沁み込んでいる。ついでにバック・ミュージシャンとしてのクセも沁み込んでいる。前に出るのが照れくさいというか,大人しいというか,落ち着いている。『SECOND DIMENSION』の演奏の方がフレッシュである。
“老練の”音造りなのにDIMENSIONのアイデンティティはまだ発露。大人と子供が同居する。DIMENSIONがDIMENSIONらしく成長する前の濃厚なエキスがたまらない。この『FIRST DIMENSION』の味は一度味わうとクセになる。
01. Go Up Stream
02. Take It Easy
03. Throw Back
04. After Fiver
05. Child Of Pirate
06. Night Voices
07. Ocean Express
08. Selfcontrol
09. NOIZ
10. Rainy
11. 薫風
(BMGルームス/BMG ROOMS 1992年録音/BMCR-6001)
(ライナーノーツ/中田利樹,松下佳男)
(ライナーノーツ/中田利樹,松下佳男)