14TH DIMENSION “HEARTS”-1 DIMENSION“円熟のクラッシュ・アンド・ビルド”期のピークであり,正しく“円熟”を感じさせてくれたのが『14TH DIMENSION “HEARTS”』である。
 『14TH DIMENSION “HEARTS”』こそ,従来のDIMENSIONを“ぶち壊した”アルバムはない。そう。DIMENSIONが自分たちの“売り”である「超絶技巧」を捨てたのだ。

 『14TH DIMENSION “HEARTS”』のキャッチ・コピーは「言葉が無くても伝わる音」。DIMENSIONが目指したのは“心休まる珠玉のメロディ”であって,聴かせる演奏の細部の“旨み”ではない。
 そう。増崎孝司小野塚晃勝田一樹の3人組ユニット=DIMENSIONは,ついにスタジオ・ミュージシャンとしてのポリシーを捨ててきた。意識的に複雑なキメを封印してきたのだ。

 DIMENSIONというバンドは明らかにマニアック! ターゲットである楽器小僧とフュージョン・ファンにはド・ストライク!(エレキコミックな漫談バンドの雄=TRIX好きにも!)
 一方で,フュージョン女子率は低かった。カシオペアスクェアほどに一般受けはしなかった。う~ん。名曲はたくさんあるのに。分かりやすくてきれいな演奏なのに。どうしてだろう。なぜなんだろう。

 そこでDIMENSIONは考えた。自分たちの音楽を「伝える」ためにスムーズ・ジャズを取り入れてみよう。
 耳馴染みの良い音楽。「いかに伝えるか」に重きが置かれた音楽。それが『14TH DIMENSION “HEARTS”』の真実だと思う。雰囲気ある“ルーズな演奏”が続いていく。

 バラードやミディアムは少ない。『14TH』で「DIMENSIONDIMENSIONを伝えるために選んだ」スムーズ・ジャズは,おもいっきり“ダンサブル”である。
 しかしアルバム全体に流れる雰囲気や空気感は紛れもなく“HEARTS”している。いい距離感で感覚に訴えてくる。

14TH DIMENSION “HEARTS”-2 個人的には【IF】を超えたであろう【HEARTS】。こちらも【SE.LE.NE】を超えたであろう【AFTER GLOW】の2トラックは神!

 『14TH』がスムーズ・ジャズしているのは序盤だけで,中盤ではパット・メセニー・グループが現われ,終盤ではクラブ・ジャズ大登場のコンフュージョンである。
 ラストの【CONFUSION】は,トラック・タイトルよろしくメロディとビートの鍔迫り合いで,正に『14TH』の象徴トラックだと思う。
 【NUDISTIC】が『15TH』以降のDIMENSIONを予言しているし【DO YOU KNOW ME?】には塩谷哲が入っている。

 『14TH DIMENSION “HEARTS”』が大好きだ。う~ん,書きたい。書き綴りたくなる強烈な衝動を感じる。
 でもこれ以上は書かない。なぜなら『14TH DIMENSION “HEARTS”』のコンセプトは「言葉が無くても伝わる音」。言葉など要らない。
 『14TH DIMENSION “HEARTS”』を是非聴いてほしい。

  01. Hearts
  02. Stylish of Swing
  03. After Glow
  04. Mad about you
  05. Far away
  06. Nudistic
  07. Change Over
  08. Do you know me ?
  09. Hand Out
  10. Get with it
  11. Confusion

(BMGルームス/BMG ROOMS 2000年発売/BMCR-7045)

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