
この『アンセム』『ジャズ・ワルツ』『ドリームダンシング』の3作を聴いてみて,管理人は寺井尚子の極意を究めた。
寺井尚子のアルバム選びは,もう好きな曲を演っているかどうかで選べばいい。もう演奏の基本形は変わりそうもない。残念&スッキリ。
ただし,完全に心が離れたにもかかわらず,実際には『ドリームダンシング』の後も切れ目なく『夜間飛行』『ジェラシー』『小さな花〜アマポーラ』を購入させた寺井尚子はなかなか。どうにも「後ろ髪」を引かれてしまった。
さて,管理人に寺井尚子の「満腹感」を感じさせた『ドリームダンシング』は,ますますジャズ度が薄まっている。
ジャズを名乗れるは3曲。ジャンゴ&グラッペリの【マイナー・スイング】。ヴィクター・ヤングの【ゴールデン・イヤリングス】。エリントンの【ムード・インディゴ】であるが,刺激的なのは【ムード・インディゴ】のみ。
そう。『ドリームダンシング』のハイライトはラストの2曲。シナトラの【マイ・ウェイ】とディズニーの【星に願いを】なのである。
『ドリームダンシング』へ駄盤の落印を押しかけたのをとどめた【マイ・ウェイ】が素晴らしい。圧巻の寺井尚子の説得力はシナトラ以上である。いいや,寺井尚子のヴァイオリンはシナトラではなく演歌歌手のよう。こぶしをきかせた,寺井尚子にしか表現できないジャズ・ヴァイオリンに“ゾクゾク”する。
【星に願いを】は寺井尚子のヴァイオリンと北島直樹のピアノのデュエット。この温かで感傷的なロマンティズムにやられてしまう。アドリブを排除した美メロのヴァイオリンが感動もの。
残りの8トラックの評価は,読者の皆さん自身で実際に聴いて判断してほしいと思っている。
前々から繰り返し書いているのだが,東芝EMI移籍後の寺井尚子のバンド・サウンドは質が上がっている。まとまっているし外さない。
これがBGM風なムード音楽・映画音楽,もっと言えばクラシックやポピュラー畑のヴァイオリニストなら『ドリームダンシング』こそ最上級の演奏であろう。
しかし管理人は,寺井尚子には寺井尚子にしか表現できないジャズ・ヴァイオリンの世界を知っている。
『ピュア・モーメント』『プリンセスT』『ライヴ』と来て,とどめの『オール・フォー・ユー』。この4枚に『オール・フォー・ユー』を含めたビデオアーツ時代の寺井尚子は,ヴァイオリニストではなくトランペッターだったとしてもギタリストだったとしても,他のどんな楽器を演奏していたとしてもジャズメン=寺井尚子ここにあり〜。
しかし『ドリームダンシング』での寺井尚子は,ヴァイオリニストの枠内に収まっている。ジャズ・ヴァイオリニストとも違えばトランペッターでもギタリストでもない。もはやジャズメンとは認められない。葉加瀬太郎や宮本笑里と同列のヴァイオリニスト。
「大衆迎合路線」の寺井尚子はもうたくさん。『ドリームダンシング』でゲップを覚えた。しばしのお別れ,尚子様。

管理人はジャズメン=寺井尚子を知っている。寺井尚子の実力と熱いハートを知っている。管理人はビデオアーツ時代の寺井尚子を全面的に支持する。あの時代の寺井尚子がJ−ジャズ界の“女王様”。上原ひろみや矢野沙織などまだ青い。
幸い,CD−EXTRA仕様:【ハバネラ(ライヴ映像)】には,ジャズメン=寺井尚子の姿が収められている。そう。ジャズの醍醐味=ライブにおいては,ジャズメン=寺井尚子はまだ死んではいない。カルメンを演っているのにスイングしている。
帰っておいで。ジャズメン=寺井尚子。カムバック,愛しの尚子さま〜。
01. MINOR SWING
02. HABANERA
03. UNDER PARIS SKIES
04. BROKEN BLOSSOMS
05. THOSE HAPPY SUNDAYS
06. GOLDEN EARRINGS
07. WHEN LOVE IS SHINNING
08. MOOD INDIGO
09. DREAMDANCING
10. MY WAY
11. WHEN YOU WISH UPON A STAR
(東芝EMI/SOMETHIN'ELSE 2005年発売/TOCJ-68064)
(ライナーノーツ/川井龍介,高井信成)
CD−EXTRA仕様:【ハバネラ(ライヴ映像)】
(ライナーノーツ/川井龍介,高井信成)
CD−EXTRA仕様:【ハバネラ(ライヴ映像)】
コメント
コメント一覧 (2)
所謂「褒め殺し」ってやつですかね。寺井尚子ファンでしたらごめんなさい。
結果だけみれば上々ですが,何か違うんですよね。白か黒かと言われれば『ドリームダンシング』は黒です。すっきり?