
あの『MODERN』とは名ばかりの“荒くれた”ビート。これぞナニワ・エキスプレスだと思っていた。
しかしそうではなかった。『MODERN BEAT』のナニワ・エキスプレスは,あれでもかなり洗練されていた。ナニワ・エキスプレスにしては『MODERN BEAT』だったのだ。
真実のナニワ・エキスプレスとは浪花エキスプレス。
真に“荒削り”なビートとは「浪花エキスプレス」名義の2枚目『DAIUCHUHMUGENRYOKUSHIN』(以下『大宇宙無限力神』)のことを指す。
『大宇宙無限力神』を聴いた直後に『MODERN BEAT』を聴き比べれば,あの『MODERN BEAT』が“スマート”に聴こえてしまうのだから恐ろしい。
そう。同じバンドであるはずなのに,浪花エキスプレスとナニワ・エキスプレスの間には“雲泥の”個体差があるのだ。
清水興が自己紹介する浪花エキスプレスとは「スーパー・ハード・ロック・ウルトラ・ジャズ・バンド」。確かにジャズ・ロックである。浪花エキスプレスは,世間がフュージョンという言葉でイメージする“ライトでクロスオーバーな”バンドではない。
“知的でお洒落な”フュージョンとは異なる“ワイルドで肉欲的な”フュージョン。浪花エキスプレスのアドリブは,もはや“理性ではなく本能”そのもの。血が沸き燃えたぎるエナジー,炸裂するテクニック,ガチンコにぶつかるメンバーの個性がハンパない。「主役は俺だ〜」とばかりに5人が5人とも楽器で“シャウト”する感じ。
そんなナニワ・エキスプレス随一の“本能の肉食系”の記録が『大宇宙無限力神』。
どうですか? このインチキ宗教っぽい?アルバム・タイトル( ← 失礼 )。こんなタイトル,普通の思考回路では思い浮かぶはずがない。そしてこんな重低音,普通の思考回路では思い浮かぶはずがない。常識で測ることのできない規格外の変態集団の大音量! 大口径のスピーカーでも再生できない音圧+振動に「うお〜」! 『大宇宙無限力神』は,歪むウーハー・不良の爆音ロック! 近所迷惑な初代騒音おばさん仕様に家族全員激怒する?
しかしそんな近所の隣人や家族からのクレームに耐え抜き,聴き込み続けて初めて見える景色があった。
【大宇宙無限力神】の“霊界の音”=シンフォ・プログレ〜サイキック。シンセサイザーの展開が凄まじい。
清水興のゴリゴリなベースを補って余りあるシンセサイザーの超重低音が拍動している。キメキメの岩見和彦のギターが奏でるテーマの後に登場する青柳誠のソプラノ・サックスが浮遊する。そこに中村健児の「ケンジーター」のフィードバック奏法が絡みつき…。あ〜,徐々に意識が遠のいていく〜。はるか遠くまで連れ去られていく〜。
そこで“降臨”するのが東原力哉! 東原力哉のドラムがバスドラ一発で疾走する! このタイコの響きがナニワの儀式,ナニワの神事なのである。

管理人も『大宇宙無限力神』を拝聴する時には,血圧を確認してから防護服を身にまとって正座するのが儀式である。さもなくば【大宇宙無限力神】の放つ“御来光”でヤケドしてしまう。すぐに【レッド・ゾーン】へと突入してしまう。
でも大丈夫。【ジェローム】で“のほほ〜ん”が【イマージュ】の蜃気楼で〜す。
最後にカミングアウトしちゃいます。
ここまで『大宇宙無限力神』を絶賛してきましたが,草食系な管理人には,正直,超肉食系の『大宇宙無限力神』より,プチ肉食系の『MODERN BEAT』の方が肌に合ったりします。
01. RED ZONE
02. IMAGE
03. DAIUCHUHMUGENRYOKUSHIN
04. MARSHALL ARTS
05. SPOT
06. JEROME
07. 9TH MOUNTAIN HIGH (LIVE AT GOPPNGI PIT OUT)
08. DAWN
(CBSソニー/CBS/SONY 1982年発売/38DH30)
(ライナーノーツ/岩見和彦,中村健児,青柳誠,清水興,東原力哉)
(ライナーノーツ/岩見和彦,中村健児,青柳誠,清水興,東原力哉)
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