
2003年はプリズムの25周年記念リリース・ラッシュ。7枚のうち4枚は「DSDリマスタリング&紙ジャケット巻帯仕様」の再発だったのだが,そのマスタリング作業中に偶然見つかったマスターが『1977 LIVE AT SUGINO KODO』だった。ねっ,棚ボタでしょ?
27年もの倉庫での長い眠りから目を覚ました,若き日のプリズムの演奏は「日本初のフュージョン・バンド」その通り。実にソフトで軽快なライブである。今のようなギリギリとエッジが立ったシャープさはないかわりに音に厚みとまろやかさがある。
アレンジはアルバムの発売から日が浅いせいか「スタジオ録音の再現」が多いのだが【VIKING】や【PRISM】といった高速チューンでも「レコード通りの演奏」をライブで再現できるとは素晴らしい「超絶技巧集団」であった。
『1977 LIVE AT SUGINO KODO』の聴き所は2つ。
1つ目の聴き所はデビュー・ライブゆえのハプニング? 単純にオリジナル曲が足りなかっただけ? プリズムの全ディスコグラフィ“唯一の”カヴァー・ナンバー3曲収録。
アル・ディメオラの【MIDNIGHT TANGO】とジョージ・デュークの【THAT’S WHAT SHE SAID】も興味深いが,何と言っても和田アキラの“アイドル”である,トニー・ウィリアムス・ライフタイム・フィーチャリング・アラン・ホールズワースの【FRED】での早弾き。
ライフタイムはトニー・ウィリアムスのダブルが基本なので鈴木リカのシングルは迫力に欠ける。森園勝敏のギター・ソロも攻めあぐねている。しか〜し,和田アキラのギター・ソロは絶好調。鈴木リカと森園勝敏の分までスパーク。「なんせ人一倍練習したもん。なんせ人一倍好きなんだもん」の「アラン・ホールズワース愛」がギターの早弾きで綴られている。
2つ目の聴き所は“名バッキング・ギタリスト”森園勝敏のギターである。
プリズムの“売り”であったツイン・ギターは同格ではない。あくまでメインは和田アキラであり(時にリードを取る事もあるが)森園勝敏は和田アキラの“ひきたて役”が役所。
正直,管理人は『1977 LIVE AT SUGINO KODO』を聴くまでは森園勝敏をあまり評価していなかった。「和田アキラあっての森園勝敏」だと思っていた。しかし『1977 LIVE AT SUGINO KODO』の森園勝敏の味が超一級品。この“緩急自在”のギターは和田アキラには真似できないシロモノ。
そう。プリズムのツイン・ギターは「森園勝敏あっての和田アキラ」であった。読者の皆さんも固定観念なしに森園勝敏のギター・ラインを追い続けてみてください。絶対再評価!

『1977 LIVE AT SUGINO KODO』は「早すぎた天才」バンド=プリズムの記録。『1977 LIVE AT SUGINO KODO』が,日本中にフュージョン・ブームを巻き起こした『ジェントル・ソウツ』以前とはにわかに信じ難い。
多くのフュージョン・バンドが『ジェントル・ソウツ』のコピーからスタートしたのに対し,プリズムはロック〜フュージョンへの流れの中で独自のオリジナリティを確立している。こんな「プログレ・フュージョン」は世界的に見てもプリズム以外に存在しない。
『1977 LIVE AT SUGINO KODO』の演奏を,2004年仕様の耳で冷静に確かめてみた。そしてプリズムへの確信を強めた。「早すぎた天才」バンド。それがプリズムなのである。
PS それにしても「これ本当に約30年前の音源なの?」と思う程音質が良い。ユニバーサルさん,いい仕事してくれました。でもでも,せっかくなんだからDSDリマスタリング&SACD仕様にしてくれたら良かったのにぃ。
disc one
01. MORNING LIGHT
02. CYCLING
03. FRED
04. VIKING
05. DAYDREAM
06. SHAKE YOUR HEAD
07. MIDNIGHT TANGO
08. 風神
disc two
01. DANCING MOON
02. BENEATH THE SEA
03. PRISM
04. LOVE ME
05. TORNADO
06. THAT'S WHAT SHE SAID
(ユニバーサル・ミュージック/UNIVERSAL MUSIC 2004年発売/UPCH-1344/5)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/吉成伸幸)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/吉成伸幸)