
『ACROSS THE GROOVE』の真実は,前半2曲が「本田雅人・ウィズ・フォープレイ」で後半8曲は「フォープレイ・ウィズ・本田雅人」。
そう。『ACROSS THE GROOVE』は,本田雅人とフォープレイの豪華共演盤。ついに“ハイパー・フュージョン・サックス・プレイヤー”本田雅人が世界へ飛び出した!
かつて渡辺貞夫がデイヴ・グルーシン,リー・リトナー,チャック・レイニー,そしてハーヴィー・メイソンたちと『MY DEAR LIFE』で世界へ飛び出した時のように…。
…と思ったあなたは大外れ。管理人も本田雅人の“世界進出”を期待したが『ACROSS THE GROOVE』はその種のアルバムではない。“外へ外へ”の正反対=じっくりと熟成された“内へ内へ”の音造り。
フォープレイに心酔した本田雅人の“円熟”。それがスムーズ・ジャズである。ドッヒャ〜。
全曲,本田雅人のオリジナルなはずなのに【CAPTAIN GIOVANNI】と【HA−RU−U−LA−LA】以外は,どうにもこうにもボブ・ジェームス。ここはサンタモニカかLAか,西海岸の爽やかな風が吹いている。
尤も,本田雅人も相当頑張っている。このアルト・サックスの伸びやかさは本田雅人特有のものだ。しかし音の個性でボブ・ジェームスが本田雅人を圧倒している。
なんでエレピなのに「あっ,ボブ・ジェームスだ」と思ってしまうのか不思議でならないのだが,ボブ・ジェームスのエレピが聞こえている限り,どうしてもフォープレイに聞こえてしまう。「ラリー・カールトン抜きの4分の3」でこの存在感。フォープレイはMJQを超えてしまったと思っている。
まぁ,秘密はネーザン・イーストのベース&スキャットに負う所が大きいと薄々分かってはいるのだが…。
( 今日のところはボブ・ジェームスということで…。ハーヴィー・メイソンごめんなさい )
『ACROSS THE GROOVE』における本田雅人の“チャレンジ”。それは初の海外レコーディング。
私の記憶が確かならば(by 鹿賀丈史風)本田雅人は海外ミュージシャンが苦手だった。私の記憶が確かならば(by 鹿賀丈史風)「演奏は上手いんだけど自分の音楽を理解してもらうまでが大変だから」という理由だった。
そんな“完璧主義者”本田雅人が,自分の音楽を理解してもらえるはずのない?たった3日間の“チャレンジ”レコーディングにGOサイン。これは日本出発前に相当準備した? いいや,この完璧な出来上がりは本田雅人の準備の賜物というよりも“フュージョン界の生き字引”ボブ・ジェームス,マイク・ミラー,ネーザン・イースト,ハーヴィー・メイソンの“音楽力”の賜物であろう。

この激動の4年間の充実期。ソロを離れた“引っ張りダコな活動”の成果が『ACROSS THE GROOVE』における“円熟&チャレンジ”。“天才”本田雅人のマルチなトータル・バランスが深化している。
(フォープレイのアルバムはいつでもそうなのだが)『ACROSS THE GROOVE』の完成度の高さに気付くようになったが最後。毎回,静かなる興奮を覚えてしまう。
ナチュラルで優しいのにゴージャスでカッコイイ。スムーズ・ジャズに心酔する本田雅人を聴くのもまた一興である。
01. Captain Giovanni
02. HA-RU-U-LA-LA
03. Heart Of Zipangu
04. Stephanie
05. Cool Bounce
06. Diversity
07. Prairie In The Morning
08. Ocean Avenue
09. Friends Of My Life
10. My Ballad
(BMG/BMG 2008年発売/BVCJ-34035)
コメント一覧 (2)
いつもと勝手が違うメンバー達との短期間のレコーディングは彼にとっては大きなチャレンジだったのでしょうが、出来上がったサウンドは、このメンバーだからこその内容で、本当に素晴らしい出来だと思います。
このクラスのミュージシャンになると、目配せだけで、お互い何を求めてるのか分かってしまうのかもしれませんね♪
ボクもリラックスしたい時に、このCDを良く聴きます。
そして、改めてボブ・ジェームスの存在感に圧倒されたような気がします。
思うに本田さんがJ−フュージョンの最終兵器じゃないのかと。その本田さんの共演者としてフォープレイこそふさわしいのではなかったのかと。そう思うにつれ『アクロス・ザ・グルーヴ』は勿体無かったなと。次の共演のチャンスを失ってしまったのではないかと。もっとじっくり作ってくれたらと。グチでどうもすみません。