VENUS WO SAGASE-1 『ヴィーナスを探せ』は,松岡直也の新バンド「松岡直也 BANDA GRANDE」のデビューCDである。

 「松岡直也 BANDA GRANDE」は松岡直也“待望の”7管ホーン入りで13人編成のビッグ・バンド。そして松岡直也ビッグ・バンドと来れば「WESING」の復活を連想するファンも多いことだろう。
 しか〜し「松岡直也 BANDA GRANDE」の真実は“カシオペアもどきのバンド・アンサンブル”であって「WESING」とは完全な別物である。

 そう。“仮想”野呂一生大橋勇ギターだけがアドリブCOOLにキメていく。「WESING」時代のホーン隊はソロを吹いたが「BANDA GRANDE」のホーン隊はアンサンブルのみ。それもそのはず。御大=松岡直也でさえ,バンド・リーダー=松岡直也からソロ・パートをほとんど与えられていないのだ。

 『ヴィーナスを探せ』の狙いは“シャープで華やかなラテン・フュージョン”である。松岡直也大坪稔明のツイン・キーボードに絡む7管ホーンの色鮮やかな音色が最高に素晴らしい。
 でもでも『ヴィーナスを探せ』の主役は,アルバム全体でちょくちょく顔を出す大橋勇カシオペアであり高橋ゲタ夫ジャコ・パストリアスである。
 
 事実,松岡直也の冠を伏せてブラインド・テストを実施すれば【THE STRIKER〜勝利のストライカー】【ヴィーナスを探せ】【SPACE NAVIGATION】【MOON DRIVE】の4トラックは,同年発売,カシオペアの『ANSWERS』の姉妹盤であり,スティール・ドラムが連打されるトロピカルなリズムとブラスと低音“ブイブイ”チョッパー・ベースの【オレンジ色のエスパドリーユ】は晩年のジャコ・パストリアスのそれである。

 ここに「松岡直也 BANDA GRANDE」の狙いが見え隠れしている。そう。「松岡直也 BANDA GRANDE」の結成理由は大橋勇高橋ゲタ夫のスーパー・テクニシャン・シフト!
 言わば「松岡直也 BANDA GRANDE」は松岡直也マイルス仕様。7管ホーンの導入はラテン・フュージョンとのコントラストが為である。

VENUS WO SAGASE-2 サイドメンに自由自在にアドリブを吹かせつつ,自分自身の音楽の質を上げていったマイルス・デイビス。『ヴィーナスを探せ』での松岡直也も同様で,バンマスの役割を高橋ゲタ夫に委ね,自身はピアニストとしての一発を狙っている。アンサンブルの中から「ひょこっと」顔を出してはおいしいとこだけ食べている。キッチリと“ザ・松岡直也”を印象付けている。

 松岡直也は「松岡直也 & ウィシング」時代は激情家であったが「松岡直也グループ」時代の成功の切磋琢磨を経て「松岡直也 BANDA GRANDE」時代でインテリ音楽家となった。

  01. THE STRIKER〜勝利のストライカー
  02. 激愛
  03. オレンジ色のエスパドリーユ
  04. 永遠の想いをのせて
  05. ヴィーナスを探せ
  06. 誘惑のマドリッド〜NIGHT IN MADRID
  07. SPACE NAVIGATION
  08. MOON DRIVE
  09. “P-KAN”ダンス
  10. SUNSET KISS
  11. ミ・アモーレ

(ワーナー・ミュージック/WARNER MUSIC 1994年発売/WPC6-8041)
(サンプル盤)

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