PARKER'S MOOD〜LIVE IN NEW YORK-1 『PARKER’S MOOD〜LIVE IN NEW YORK』(以下『パーカーズ・ムード〜ライブ・イン・ニューヨーク』)は『SAKURA STAMP』のブルーノート・ツアーで共演したジャズ・ジャイアント,ジミー・コブが“引っ張り出した”ニューヨークは「SMOKE」におけるライブ盤。

 早めに結論を書いておくと,矢野沙織は“まだまだ”。スタジオ録音での“切り貼り”は本人も認める周知の事実が本当であった。やっぱりワンテイク一発で,あの“初老”の演奏はベテランでも難しいものである。

 『パーカーズ・ムード〜ライブ・イン・ニューヨーク』の原型となった『SAKURA STAMP』のブルーノート・ツアーを拝聴できたがライブは勢い! 良かった! きっと「SMOKE」の現場も生で聴いたら絶賛すべきライブ評だったのだろうが,後日冷静に聴き直すと「音程の粗が目立ってしまう」宿命。

 正直,管理人的には“ジミー・コブ・トリオあっての”矢野沙織の感有り。ジミー・コブ・トリオ矢野沙織の良さを引き出し足りない部分を補っている。ジミー・コブ・トリオ矢野沙織が舞わされている。
 しかし,そんなライブ盤を18歳にしてリリースできる“大物”が「日本のキャノンボール・アダレイ」=矢野沙織である。デビュー2年でライブ盤をリリースできる実力,リリースできる勇気に“あっぱれ”!

 『パーカーズ・ムード〜ライブ・イン・ニューヨーク』はライブ盤ゆえ1曲1曲の演奏時間が長い。収録わずか7曲にして演奏時間62分。CDでは“切り貼り”作業でカットされる長尺のアドリブ・パートも大収録。ビ・バップの熱気と伸びやかなプレイ。うわ〜!

 改めて『パーカーズ・ムード〜ライブ・イン・ニューヨーク』における矢野沙織アドリブを聴き込んでいくとジミー・コブの語る「サオリは日本のキャノンボールだ」に同意する。チャーリー・パーカーよりもキャノンボール・アダレイに“激似”である。
 ズバリ“激似”はノリである。キャノンボール・アダレイは大変器用で間口の広いアルト奏者。有名なのは“ファンキー”キャノンボールであろうが,ここで管理人が挙げているのは“バッパー”キャノンボールのことである。

PARKER'S MOOD〜LIVE IN NEW YORK-2 “バッパー”キャノンボールについては後日,キャノンボール・アダレイ批評の中で詳述することとするが,本気のキャノンボール・アダレイの演奏はチャーリー・パーカーの演奏に近い。そう。キャノンボール・アダレイ矢野沙織と同様,チャーリー・パーカーの崇拝者なのだ。

 チャーリー・パーカーソニー・スティットフィル・ウッズキャノンボール・アダレイ渡辺貞夫矢野沙織。これぞ“パーカー派”の主要系譜である。
 そう。21世紀の「パーカー・ショック」は矢野沙織アルト・サックスに宿っている。『パーカーズ・ムード〜ライブ・イン・ニューヨーク』の音に「21世紀のビ・バップ」がある。まぁ,そんな大袈裟に言うことでもないのかなぁ。

  01. I Got Rhythm
  02. The Days Of Wine And Roses
  03. Composition 101
  04. Don't Explain
  05. Parker's Mood
  06. Bohemia After Dark
  07. A Night In Tunisia

(サヴォイ/SAVOY 2005年発売/COCB-53434)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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