
そう。「マニアックなジャズ・ギタリスト気質」の抜けた,広く大衆へアピールすることを意識したジャズ・ロック。ロックのスピリッツをジャズの即興演奏で奏でられた美メロの玉手箱なのだ。
そんな『スパイス・オブ・ライフ』の続編である『スパイス・オブ・ライフ 2』の製作意図は“夢のギター・トリオ・リターンズ”ではない。大ヒット記念の「2匹目のドジョウ」ではない。『スパイス・オブ・ライフ 2』の製作意図は“夢のギター・トリオ・リベンジ”なのである。
『スパイス・オブ・ライフ』は渡辺香津美の狙い通りにプログレ・ファンを取り込む大好評。それはそれで大成功。しか〜し,渡辺香津美が広く大衆へアピールしようと思った動機は“己のギター・シンセサイザー”!
その意味で『スパイス・オブ・ライフ』は不発。プログレ畑で渡辺香津美の評価は上がったが,同様にジャズ/フュージョン畑ではビル・ブラッフォードの評価がウナギノボリ! あれ〜,またしても気付けば「バンド内2番手」?
当世NO.1のビル・ブラッフォードとジェフ・バーリンのリズム隊を「踏み台」にするはずが,逆に「踏み台」にされている? よっしゃ〜,リベンジだ〜。今度は“サポート・キーボード”ピーター・ヴェテッシを掌握して臨む「真の格闘技セッション」第2章〜。
結果『スパイス・オブ・ライフ』では3人の力関係が拮抗していたが『スパイス・オブ・ライフ 2』では見事にビル・ブラッフォードとジェフ・バーリンの“頭を押さえている”。コード・ワークはピーター・ヴェテッシに任せ,ひたすら“己のギター・シンセサイザー”を歌わせる。「ギター・ヒーロー」渡辺香津美ここに有り〜!
殊に【アンドレ】【スモール・ワンダー】が超・超・カッコイイ!
そう。『スパイス・オブ・ライフ 2』は“夢のギター・トリオ”が夢の途中で解体した「渡辺香津美・ウィズ・ビル・ブラッフォード&ジェフ・バーリン+サポート・キーボード」。
渡辺香津美のギター・シンセが前面に出すぎたために,ビル・ブラッフォード&ジェフ・バーリンがこじんまり。リズム隊も結構複雑なことを演ってる割りには,なぜだか地味に聴こえてしまう。
ギター・トリオ特有の,抑揚の振れ幅が小さいというか,破天荒な感じが無く,妙に小奇麗にまとまって感アリアリ。ジャズ・ロックであるがゆえ「ワクワク」「ドキドキ」「トキメキ」が希薄。うん。いい音楽なんだけど…。

「プログレ界のドン」ビル・ブラッフォードを“自分色に染め上げた”「スーパー・ギタリスト」としてのプライドを取り戻した渡辺香津美は『スパイス・オブ・ライフ』よりも『スパイス・オブ・ライフ 2』の完成に思い入れがあるように思うが,管理人的には「容赦なしのぶつかり合いで」完成した『スパイス・オブ・ライフ』の方が好みだなぁ。
(ここからはおまけ)渡辺香津美の「その人?」批評。
渡辺香津美の最大の魅力は「ソロで飛び出す瞬発力」! 【マイルストーン】【風連】しかり,渡辺香津美というギタリストは,常時前に出続けるマラソン走者ではなく“一発KO型”短距離走者の特性に格別な才能を見い出せる。
その意味で惜しむべきはマイルス・デイビス。もしあの時,マイルスの誘いに応じていたなら,今でもジョン・スコフィードの地位にはいたであろうに…。「世界のWATANABE」と来ればあの渡辺貞夫を引き離し「KAZUMI」一人を指すようになっていたであろうに…。無論,マイ・フェイバリットなナベサダは偉大です〜。
01. ANDRE
02. WE PLANET
03. FU BU KI
04. RAIN
05. SMALL WONDER
06. CONCRETE COW
07. KAIMON
08. MEN AND ANGELS
(ポリドール/DOMO 1988年発売/UCCJ-9096)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/成田正)
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