
しかし『キロワット』ではメンバーが一新され,ベースがジェフ・バーリンからバーニー・ブルネルへ,ドラムがビル・ブラッフォードからジョン・ワッカーマンへと交代した。サウンドの傾向としては『スパイス・オブ・ライフ 2』の続編っぽいのだが,いや〜,どうしてどうして。メンバーの違いでサウンドが激変!
ネーム・リューでは少々劣るがテクニックはほぼ互角。ワイルドなイメージがあったジェフ・バーリン+ビル・ブラッフォード組の硬いサウンドから,バーニー・ブルネル+ジョン・ワッカーマン組の何ともエレガントで柔軟な対応力へと大変貌! これぞギター・トリオの“奥深さ”であろう。
バーニー・ブルネルがフレットレス・ベースを弾くせいなのか,それともジョン・ワッカーマンが電気ドラムを叩いたせいか知らないが,とにかく明るい! とにかく軽快!
超絶重低音から超絶低音へと乗り換えた渡辺香津美のギター・シンセが,前へ前へと突き進む。全体の印象としては『ト・チ・カ』の頃の瑞々しさに溢れた感じ。これはいい。
そう。「ギター・ヒーロー」渡辺香津美が『スパイス・オブ・ライフ』→『スパイス・オブ・ライフ 2』で目指した音は『スパイス・オブ・ライフ 2』では到達せずに『キロワット』で結実したと思っている。ゆえに管理人の中で『キロワット』は,別名『スパイス・オブ・ライフ 3』なのである。
思うに『キロワット』は渡辺香津美の自信作。だって『KILOWATT』のジャケットに浮かぶ『KW』の文字は渡辺香津美のイニシャル『KW』。「これぞ自分の音」の自己紹介。
“理想のギター・トリオ”の完成に加えてビッグ・ゲスト3人入り! ビル・ブラッフォードつながり?でキーボードにパトリック・モラーツ,そして何と!元ウェザー・リポートからサックスのウェイン・ショーターとパーカッションのアレックス・アクーニャ。やっぱりショーターはハズサナイよなぁ。
ズバリ,この陣営は渡辺香津美“理想のギター・カルテット”を名乗っても申し分ない。カズミ・バンドと甲乙付け難い。でも…。

この質問に対する神様からの回答は聞かなくても分かります。「それはねぇ。『キロワット』が『スパイス・オブ・ライフ』の時のように売れなかったからだよ」。ちゃんちゃん。
名盤の拳を振り上げてしまったのに世間的にはサッパリ盤。OH!NO! この後,渡辺香津美と管理人は一体どうすればいいんだ? ねえねえ,教えて神様〜。
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10. Good Night Machines
(ポリドール/DOMO 1989年発売/HOOP20348)