
「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」の音の醍醐味は,次に何が飛び出してくるか分からない痛快さ&恐ろしさ。フュージョンについて回るイメージをことごとく裏切り続ける。そんな期待感を常に抱かせてくれる“テンション高めな”新バンドの大登場。リキを入れずにユーモアが入っている。狙うは何かのパロディ・ミュージックなのか?(特にYMOの【FIRE CRACKER】)。
「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」のメンバーは4人。リーダーでギターの渡辺香津美に,ベースのバガボン鈴木,ドラムの東原力哉,パーカッションの八尋知洋。
OH!よくぞこれだけ個性溢れるメンバーを集めてくれました。知性派と野性派が合体したメンバー構成が「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」のツボ。「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」は,何が飛び出してくるか“一か八かの”「禁断の音の玉手箱」。
そんな「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」がデビューCD=『PANDORA』(以下『パンドラ』)で「禁断の音の玉手箱」=「パンドラの箱」を開けてしまった。
『パンドラ』で開いた「パンドラの箱」。音の中身は「パンドラ」発祥の地,ギリシャ・トルコ方面の東西融和のオリエンタル・フュージョン。要は“無国籍”なフュージョン・ミュージック。
「胆はロック,精神はジャズ,ファンクな心に頭ブラジル」。このバンドに付けられたキャッチコピーが「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」の全てを言い当てている。
『パンドラ』には曲のイメージに合わせた5人+MAMBO BOYSのゲスト入り。でもでもやっぱり…。
ゲストにキーボード・プレイヤーがいない。理由は「世界一」のギター・シンセサイザー・プレイヤー「渡辺香津美・フィーチャリング」。ここにギター・トリオでホームラン3連発をかっとばした渡辺香津美の「こ・だ・わ・り」を見る。でもでもやっぱり2…。
ヴァイオリンとアコーディオンはメロディアスだが中途半端。バンドの音が“こなれていない”中でのごちゃごちゃ感有り。渡辺香津美の意識がゲストの音に集中しすぎて?3人のリズム隊とのコンビネーションが今ひとつの感有り。
目指せ「無国籍」ゆえのアイディア&アドレナリンが出まくっている『パンドラ』だけは,渡辺香津美がギターの演奏に集中できる,鍵盤入りが最善の選択肢だったような…。
まっ,そんな欠点が『パンドラ』の魅力でもありますが…。

「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」の真髄は“一か八かの”「禁断の無国籍」。メンバー4人の圧倒的な演奏は素晴らしい。それだけに多彩なゲストを事前のアレンジ通りに演奏させた『パンドラ』が煮え切らない。
渡辺香津美が「渡辺香津美レゾナンス・ヴォックス」で舵を切ったは,例えるなら「コードからモードへの変化」。全員に高度な音楽性が求められるだけに,もう少しだけ消化し熟成させる時間が必要だったかなぁ。
01. Pandora
02. Peking Doll
03. Vega
04. Ashita Tenki Ni
05. Passy Home
06. Dr. Mambo X.
07. Fire Cracker
08. Kumpoo Manman
09. Arashi No Yoru Kimi Ni Tsugu
10. Django 1953
(ポリドール/DOMO 1991年発売/POCH-1089)
(デジパック仕様)
(デジパック仕様)
コメント一覧 (4)
この渡辺香津美とか仙波清彦もそうだが、オールスターセッションで全員がてんでにガーッ!と音を出すのが気持ちいいと思っているに違いない。
渋さ知らズもよく似たものだが、そういうのは古い…と言うのはあの世代のミュージシャンには分からないのだろう。
渡辺香津美や仙波清彦は「勝てる」ジャム・セッションの達人だからこその気持ち良さなのでしょうね。レゾナンス・ヴォックスの混沌として,でもセオリーを外さない幅の広さ。真似出来るもんなら“カカッテコイ”がカッコイイのです。
こちらこそ宜しくお願いいたします。
この頃の香津美さんのアルバム(ソロギターは除く)は、ほとんどの曲でテンポを決めるクリックのトラックを録音してから他のトラックを録っていったようなんですね。多分、それはシンセのフレーズとか打ち込みのパーカッションを入れたいからでしょう。
ドラムの東原氏は「俺はクリックなんか聴いてないよ。ベースに合わせてるから」と言っていますが、リズムが硬くなるのは致し方がない。
香津美さんプロデュースの寺内タケシさんのアルバムも、硬いスカビートだった。
せっかくの達人が揃ったのだから、セーノ!でやっても良かったのでは?
私は幸運なことに『パンドラ』のライブも見ましたが,印象としてはCD通りの演奏でした。自由に演っていたのはレゾナンス・ヴォックスの4人よりもアコーディオンの方だった気がします。
『パンドラ』の時期はアレンジに凝っていたのでCDの延長線上だったのでしょうが,リリースを重ねる毎に自由自在に演奏してもコンビ・チリバツで「セーノ!」で本番も演るバンドへと変化していったのは自然な流れだったのでしょう。「セーノ!」で演ったライブ音源を聴いてみたいです〜。
あっ『自業自得』は未聴なので,その部分はツッコマナイデクダサイネ。