DEAR TOKYO-1 渡辺香津美のニュー・アルバム『DEAR TOKYO』のリリースについて知った時,胸がときめいた。
 管理人の大好きな『GANAESIA』の「KAZUMI BAND」の復活&これまた『GANAESIA』とは対極にあるアンサンブルな大名盤ROMANESQUE』路線の第2弾。二つの旨みがシャッフルされた“美味しいとこどり”のコラボレーション。こんなビッグ・ニュースに興奮しないでいられますか〜!

 しかし,しかし,期待が高かった分,ダメージも大きく,即お蔵入り〜。多分,4,5回聴いて放置プレイ。だって笹路正徳高水健司山木秀夫主導のオーケストラ入りなんですよ。そこそこ普通の名盤では認められないでしょうが〜。
 笹路正徳のアレンジは本当に素晴らしいと思います。でもなんとなく『DEAR TOKYO』の雰囲気がCTIに思えてしまう瞬間が…。
 一旦そう思ってしまうと渡辺香津美がCTI絶頂期のウェス・モンゴメリー・ライクに聴こえてしまうのです。『DEAR TOKYO』が,イージー・リスニング・ジャズ・ギターに聴こえてしまったのです。やっぱりウェス・モンゴメリーを聴くのなら「ヴァーヴ時代のジャズ・ギターに限る」派なもので…。

 しかし,多くの時間が管理人の耳を『DEAR TOKYO』仕様に育ててくれていました。(大袈裟に言えば)10年振りに聴いた『DEAR TOKYO』に腰を抜かしそうになってしまった。いい。
 駄盤の評価から名盤へと評価が一転。こんなことって,たまにありますよねっ。

 『DEAR TOKYO』は,10年振りに聴いてもCTIしていることに変わりはないが,10年ぶりの印象はドン・セベスキーよりもクラウス・オガーマン
 笹路正徳の“強め”のオーケストレーションが「ウィズ・ストリングス」だったら出なかったであろう渡辺香津美の特徴を引き出している。

 渡辺香津美ギターは相手がオーケストラであっても負けることはない。笹路正徳の用意した“ギターが気持ち良く鳴る絶品スペース”の空間を泳いでいる。音楽の編成は大きくとも等身大の演奏に仕上がっている。
 ただし,笹路正徳ピアノ高水健司ベース山木秀夫ドラムは脇役に徹した演奏なのでご注意を…。

DEAR TOKYO-2 【CAVATINA】でのアコースティックギターは,決して派手ではないジャズのアプローチで描く「心象風景」が涙もの。
 お目当ての【LONESOME CAT】超渋め。硬質でノスタルジックな演奏に“心が揺さぶれられる”。聴き込むにつれ味わいが増す。
 『DEAR TOKYO』の他の7曲もそれぞれ独特な音世界。選曲もバラエティに富んでいるが渡辺香津美ギター・プレイもバラエティに富んでいる。スルメである。

 駄盤と思った『DEAR TOKYO』が,こんなにも“心掻き乱される”CDだったとは…。
 こりゃCDラックの「棚卸し」をやり直さないといけないなぁ…。

  01. CAVATINA
  02. GOODBYE PORK PIE HAT
  03. A MAGIC LAND
  04. LONESOME CAT
  05. ONE LESS BELL TO ANSWER
  06. ELI'S COMIN'
  07. BON APPETIT
  08. DESCENTE
  09. FOR TOKYO

(日本コロムビア/MAGIC NOTES 2001年発売/COCB-31371)
(ライナーノーツ/笹路正徳,成田正)

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