BIRD OF PARADISE-1 『PARKER’S MOOD』『TOKYO DATING』の2枚で“ジャズナベサダ”の“洗礼”を受けたのが高校時代。それ以来「ナベサダジャズだ」と公言してきた。友人にも奨めてきた。

 そんな管理人が『BIRD OF PARADISE』(以下『バード・オブ・パラダイス』)を手にしたのは30代半ば。実に18年の空白。“ジャズナベサダ”を推薦しておきながらお恥ずかしい。
 ただし管理人の持論に間違いはなかった。「ナベサダフュージョンではない。ナベサダジャズだ」。『バード・オブ・パラダイス』の名演を聴いてその思いを強くした。

 『バード・オブ・パラダイス』は,ザ・グレイト・ジャズ・トリオをバックに快演を聴かせる,渡辺貞夫のビ・バップ盤。題して“チャーリー・パーカートリビュート”。
 渡辺貞夫アルトのブロウが炸裂し,ハンク・ジョーンズの“選び抜かれた”艶やかなピアノと“このリズム隊しかない”と思ってしまう,ロン・カーターベーストニー・ウィリアムスドラム
 大好きなパーカー・ナンバーが“化学変化”を起こしたカルテットで演奏されるとこういう音になってしまう。実に興味深い演奏集だと思う。

 渡辺貞夫の演る“チャーリー派”は,ソニー・スティットのような同時代性が無いせいか伸びやかで明るい。テーマを愛おしむのように吹き上げ,アドリブで歌い上げる。
 『バード・オブ・パラダイス』で聴かせるアルト・サックスチャーリー・パーカーのコピーを超えた渡辺貞夫のオリジナル。これが最高にカッコイイのに和んでしまうんだよなぁ。この感覚,管理人と同じ「ナベサダ好き」なら分かっていただけるものと思います。

 『バード・オブ・パラダイス』の聴き所は「渡辺貞夫 VS ザ・グレイト・ジャズ・トリオ」。気合の入ったナベサダが先か? ザ・グレイト・ジャズ・トリオナベサダが煽られたのか?
 特にトニー・ウィリアムスの“プッシュする”ドラミングに“縦横無尽に反応する”渡辺貞夫の気迫たるや凄まじい。心なしかアルト・サックスのトーンも普段以上に逞しく聴こえてしまう。

 そんな渡辺貞夫の全てを受け止め,がっちり丁寧にサポートするハンク・ジョーンズピアノが流石。控え目なのに小気味よいバッキング。次元が違うとはこのことであろう。ハンク・ジョーンズピアノがマジで泣けてくる。病気なのかな〜。
 ロン・カーターベースが攻めている。ロン・カーターを罵倒する批評家は,この名演をどう批評するつもりなのだろう。管理人は大好きなベース・ラインです。

BIRD OF PARADISE-2 余り知られていないが『バード・オブ・パラダイス』の発売は,大ヒットした『カリフォルニア・シャワー』の直後。普通なら“売れ線”フュージョンの連投であろうが,この事実に渡辺貞夫の“ジャズへの誇り”と“ジャズへの自信”が漲っている。「本当の渡辺貞夫を聴け。チャーリー・パーカーを聴け〜」。

 『カリフォルニア・シャワー』でナベサダを知ったファンは『バード・オブ・パラダイス』に眼を白黒させ,以前からのナベサダ・ファンは「やっぱりナベサダナベサダだった。チャーリー・パーカーの後継者だった」と溜飲を下げた『バード・オブ・パラダイス』。

 “ジャズ・サックス・プレイヤー”渡辺貞夫の“誇りと自信。それが『バード・オブ・パラダイス』から聴こえてくる。“ジャズナベサダ”が飛び出してくる。
 カッコイイ。…って,長年放置していた手前,偉そうには語れないけど…。カッコイイ。

  01. BIRD OF PARADISE
  02. DONNA LEE
  03. EMBRACEABLE YOU
  04. STAR EYES
  05. DEXTERITY
  06. IF I SHOULD LOSE YOU
  07. YARDBIRD SUITE
  08. K.C. BLUES

(フライング・ディスク/FLYING DISK 1978年発売/VICJ-61159)
(ライナーノーツ/油井正一)
(☆XRCD24盤仕様)

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