
しかもこの時の武道館ライブが,米大手メジャーCBSコロムビアからLP2枚組みとして発売され,日本のナベサダ・ファンのために日本へも逆輸入された。
そう。渡辺貞夫の“栄光の歩み”を語る時『HOW’S EVERYTHING』(以下『ハウズ・エヴリシング』)は外せない。
しかし『ハウズ・エヴリシング』は名盤ではなく“迷盤”である。こんな大編成での演奏は面白くない。100人以上のバック,しかも超一流のバック相手にアルト・サックス1本で勝てるわけがない。完全に主役は“アレンジャー”デイブ・グルーシンの世界。
もっと言えば,1982年にデイブ・グルーシンも単独で日本武道館・ライブを開いたが,その実験作であり前座である。
( ← お〜っと言い過ぎた。これは勢いでの失言です。本心でそう思ったりしていません。デイブ・グルーシン・ファンの皆さん,ごめんなさい。きっと昨晩「ダークナイト」を見たせいです )。
こう皮肉りたくなる程,デイブ・グルーシンとバック・メンバーの演奏が素晴らしい。とにかくデイブ・グルーシンの書き譜通り,キッチリ,カッチリ,生真面目に演奏している。だ・か・ら・どうにも物足りない非ジャズ。
各メンバーのソロ・タイムでのアドリブでさえ書き譜のような完成度。非の打ち所のない名演が“迷盤”の元凶なのである。
『ハウズ・エヴリシング』での「ナベサダ・フュージョン」は「ソフト&メロウ」指向。当時大流行したAORからの影響が感じられ,高度に洗練された分かりやすい演奏に仕上がっており“ジャズ・サックス・プレイヤー”渡辺貞夫はここにいない。
入念なリハーサルを繰り返したことだろうし,同じ楽曲を3日間同じ場所で演奏すればジャム・セッション的な雰囲気もハプニング的な要素も消えてしまうことだろう。その副産物としての『ハウズ・エヴリシング』なのだから仕方ないのだが…。

『オータム・ブロー』での“成功の法則”は『ハウズ・エヴリシング』には通じなかった。
せっかくの日本武道館での“晴れ姿”なのだから人気ナンバーのオンパレードなら良かったのに…。
「ナベサダ・フュージョン」の総決算なら良かったのに…。
01. UP COUNTRY
02. MZURI
03. TSUMAGOI
04. ALL ABOUT LOVE
05. NICE SHOT
06. SEEING YOU
07. NO PROBLEM
08. BOA NOITE
09. SUN DANCE
10. M&M STUDIO
11. MY DEAR LIFE
(ソニー・ミュージックエンタテインメント/SONY MUSIC ENTERTAINMENT 1980年発売/SRCS9590)
(ライナーノーツ/高井信成,野口久光,油井正一)
(ライナーノーツ/高井信成,野口久光,油井正一)
コメント一覧 (4)
1980年はナベサダ、1981年はクインシー・ジョーンズ(「愛のコリーダ」発表直後)、そして1982年はデイブ・グルージンと、それぞれが音源となってどれもが印象深いです。
本作、全てがカッコ良かったですね〜。それまではオフコースやらYMOやら、またはディープ・パープルらを友人の影響で聴いてはいましたが、これぞ大人の音楽、まあスティーブ・ガッドの影響大ですけど(苦笑)、正に聴きたい音楽に巡り合えた!と感じました。だから私にとっては名盤(苦笑)。
ナベサダ聴いて「大人の音楽」とは,私と共通の体験ですね(私の場合は『パーカーズ・ムード』でしたが)。
『ハウズ・エヴリシング』のダラマーがスティーブ・ガッドで『パーカーズ・ムード』のドラマーがジェフ・ワッツ。私,未だにジェフ・ワッツが大好きな理由がこれで分かりました。最初に感じた「大人の音楽」のドラマーのせいなのですね。
私の“迷盤”批評に負けずに?「名盤」と押してきたhiroaki0907sさんの強い思い入れを感じました。誰が何と言おうと自分がそう思ったアルバムこそが「名盤」ですよね〜。
本文を読んでいただけたら分かると思いますが『ハウズ・エヴリシング』は「名盤」にふさわしいです。訂正いたしますのフォローフォロー。すみませんでした。
オケ隊がバックである事から、一定の譜面に沿って〜というのは、ジャズ的ではないのかもしれません。
ただ、24小節?32小節?決まった枠の中で、しっかりまとめる力というのもアドリブ力、歌心とも思うのです。
ただセラビーさんの考え方の方が、本来のジャズらしいトコだとも理解してますからね〜。
ちなみに私、パーカーズムードと同時期に発売されたマイシャ、こちら、きじ
hiroaki0907sさんの『マイシャ』記事でしょうか? 少し探してみましたが本日現在「その1025」まで行ってますので見つかりませんでした。お手数ですが『マイシャ』記事のURLを教えていただけますか?
私もhiroaki0907sさんの仰る「24小節?32小節?決まった枠の中で、しっかりまとめる力というのもアドリブ力、歌心」の意味は十分分かっています。なので訂正して名盤認定いたしますねっ。