
『HOW’S EVERYTHING』で100名のオーケストラと共演した経験がなせる業なのか,それともクリスマス・ライブの雰囲気がそうさせたのか,渡辺貞夫の「ウィズ・ストリングス」は“さらり”。静かに深々と盛り上がる。うあ〜。これは聴いている途中ではなく,聴き終わってから一気にグッと来る。
渡辺貞夫のアルト・サックスが冬の冷たい空気を暖める。会場全体を暖めて行く。
この日の渡辺貞夫は非ジャズ。アレンジに合わせて慎重に丁寧に楽譜を紡いでいる。この手の演奏は本来管理人の好みではない。しかし『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』は例外で良い。
(拍手のタイミングがクラシックぽいのでそう感じるのだが)当日のライブ会場にいるかの如く全神経を音だけに集中させる。じっくりと聴き入る。『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』でのスモール・コンボが素晴らしい。まるでスタジオ録音のような完成度の高い演奏集。
『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』成功の秘訣は2人のコンマス=ピアノの野力奏一とドラムのピーター・アースキンの才能にある。共にビッグ・バンドとスモール・コンボの両方で活躍し,ソロ以上に全体のアンサンブルに気を配る“JAZZYな”リズム・セクション。そこにベースの奇才=マーク・ジョンソンが加わり“艶やかな”渡辺貞夫のアルト・サックスを引き立てている。
渡辺貞夫のスモール・コンボが完璧に機能するがゆえに,バックのストリングスとも高レベルで調和が図られているのだと思う。

だんだんとスロー系。『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』が流れるスロー・ライフ。管理人は『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』と一生お付き合いする予定である。
01. I THOUGHT ABOUT YOU
02. BEAUTIFUL LOVE
03. THE CHRISTMAS SONG
04. IN THE WEE SMALL HOURS OF THE MORNING
05. TOKYO DATING
06. STOLEN MOMENTS
07. ECHO
08. HERE THERE AND EVERYWHERE
09. VIOLETS FOR YOUR FURS
10. LOVE WALKED IN
11. ONE FOR JOJO −Dedicated to Masayuki
Takayanagi−
(エレクトラ/ELEKTRA 1993年発売/WPCP-5250)