
『SADAO 2000』の主役はリチャード・ボナ。しかし『SADAO 2000』を聴いた時点では,リチャード・ボナを“アフリカの至宝”とは認めつつも“世界の至宝”とは認識できていなかった。
しかし,この事実に気付いたのはリチャード・ボナがパット・メセニー・グループ入りを果たしてから。リチャード・ボナの快進撃は『SADAO 2000』から始まっていたのに管理人は現金です。
リチャード・ボナの存在は(名声は)ザビヌル・シンジゲートで知っていた。でも噂で聞いていた程度。管理人にとって“初めてのリチャード・ボナ”が『SADAO 2000』だった。
リチャード・ボナが“天才ベーシスト”であり“ジャコ・パストリアスの再来”と噂されていたため,確かに凄い,と認めつつも心のどこかで侮っていた。
理由は『SADAO 2000』でのリチャード・ボナはベーシストというよりもマルチ・プレイヤーでありプロデューサーだったから。バンバン,ベースを“弾き倒す”リチャード・ボナは『SADAO 2000』の中にはいなかったからだ。
そう。真にリチャード・ボナは“ジャコ・パストリアスの再来”である。しかしそれは“天才ベーシスト”の意味ではない。
ジャコ・パストリアスがスーパー・ベーシストの枠を超えた,天才コンポーザーであり天才アレンジャーであったのと同じように,リチャード・ボナもスーパー・ベーシストの枠を超えた,天才マルチ・プレイヤーであり天才プロデューサーなのだ。ジャズをもフュージョンをもインストをも超えた“世紀の音楽家”なのだ。
後日『SADAO 2000』を幾度も聴き直して,管理人はそのような結論に到達した。マーカス“びいき”な管理人に“ジャコ・パストリアスの再来”を認めさせた事実にリチャード・ボナのス・ゴ・サが分かるはず〜?
…って,すぐに分からなくても大丈夫。管理人がボナのス・ゴ・サに気付いたのは『SADAO 2000』から3年後。スーパー・ベーシストとして参加した『WHEEL OF LIFE』にKOされてから。『WHEEL OF LIFE』で分からなくても『“ONE FOR YOU” SADAO & BONA LIVE』でのボナのソロが待っている。パチパチパチ。
でも“本気の”ボナを知りたいのならザビヌル・シンジゲートです。ジャコ・パストリアスを体験した“あの”ジョー・ザビヌルがリチャード・ボナに敬意を抱いちゃっています。今後,リチャード・ボナを超えるスーパー・ベーシストは現われそうにありません。でもでも管理人はマーカス命ですから〜。
う〜ん。上記リチャード・ボナ“絶賛”をもって『SADAO 2000』批評を終了しようと思ったが…。
ズバリ『SADAO 2000』でのリチャード・ボナへの“称賛”の言葉は全て渡辺貞夫にこそ帰されるべきだと思う。
リチャード・ボナを連れて来て,ジョー・ザビヌル以上にボナに自由を与えて,ボナの“トータル・ミュージシャン”としての全方位的な才能を見事に引き出している。
加えてアルト・サックスでの“サポート”ぶりが素晴らしい。ジャズ,フュージョン,アフリカというリチャード・ボナのルーツを考慮した演奏であり楽曲である。『SADAO 2000』でのアルト・サックスには“懐の深い”イマジネーションがある。

日本のサックス・プレイヤーとカメルーンのベーシストの“ボーダレス”なコラボレーション。リチャード・ボナのベーシックな音造りにナベサダにしか出来ない絶妙なニュアンス。
あっ,意外にも切れていないマイク・スターン,ブラジル代表のカフェの名演もお忘れなく!
こんな偶然の,いや必然の出会いがクロスする21世紀の“ボーダレス”ミュージック。かつてデイブ・グルーシンを相棒に「ナベサダ・フュージョン」を作り上げた渡辺貞夫が,今度はリチャード・ボナを新・相棒に「ナベサダ・アフリカン」とも呼ぶべき“ヒューマン・ジャズ”を作り上げている。
そう。リチャード・ボナは,超絶技巧をまとった“根っからの”ジャズメン。『SADAO 2000』での渡辺貞夫とリチャード・ボナ。新旧大物ジャズメンのコラボレーションを音楽の神様に感謝する。
01. MATAHARI TERBENAM (SUNRISE)
02. TE MISSEYA
03. SA SO NGANDO (STEP IN AND DANCE)
04. I THOUGHT OF YOU
05. NOSTALGIA
06. 花の島
07. LIFE IS ALL LIKE THAT (FOR SNOOPY & HIS
FRIENDS)
08. BACK YARD SUITE
09. ONE IN THE SAME
10. POR TODA A MINHA VIDA
(ヴァーヴ/VERVE 2000年発売/POCJ-1480)
コメント一覧 (2)
このアルバムでも良い仕事をしてますね。
ボナの場合、音楽が全て見えているいうか、作品ごとの自分の役割をしっかりと認識してるのでしょうね。
ナベサダとボナを引き合わせてくれた、音楽の神様に感謝ですね!
「このアルバムでも良い仕事をしてますね。
ボナの場合、音楽が全て見えているいうか、作品ごとの自分の役割をしっかりと認識してるのでしょうね」に同感です。ナベサダの個性を熟知した上で素晴らしいハーモニーを付けています。ボナはベーシストの前に音楽家ですね。
ボナはジャコパスのように我が強くないので場にそぐわないスラップを多用しません。ベースが前に出すぎると音楽が崩れることを考慮してのことでしょう。
ボナはその点を,WRでジャコパスの頭を押さえ続けたザビヌルから,ザビヌル・シンジケートで学んだのだと思います。