
そして,渡辺貞夫とリチャード・ボナの2度目のコラボレーション『WHEEL OF LIFE』(以下『ホイール・オブ・ライフ』)は,リチャード・ボナの“才能に惚れ込んだ”渡辺貞夫がリチャード・ボナに“縛りを与えた”コラボレーションである。
そう。『ホイール・オブ・ライフ』での渡辺貞夫はリチャード・ボナに「ベーシストの目線で」共同プロデュースに参加するよう“縛り”を与えている。
このように書いても伝わりづらいかもしれない。でも「ベーシストの目線で」という言葉しか思い浮かばない。
“ネイティブ・アフリカン”ならではのダイナミックで絶大なビート感にも関わらず渡辺貞夫と“完全同期”するベース・ライン。極論を言えば,リチャード・ボナのベース・ラインを追いかけるだけで渡辺貞夫のアルト・サックスが聞こえてくる思いがする。
そう。『SADAO 2000』では封印された“スーパー・ベーシスト”リチャード・ボナの演奏力を作品の「核に据えた」がゆえの大名盤の誕生である。
『ホイール・オブ・ライフ』を「ベーシストの目線で」味付けすると“スパイスのようにふりかけた”フィル・イン炸裂。安定したベース・ラインの“うねり”の中で垣間見せるフレージング。
ベース・ソロなどないはずなのにリチャード・ボナのベース抜きに『ホイール・オブ・ライフ』を語ることなどできやしない。リチャード・ボナの行なった“最高の仕事の一つ”に間違いなく『ホイール・オブ・ライフ』が上げられるべき“傑作”であると思う。
そんなリチャード・ボナの全方位型ベースを“感じ取り音としてアウトプットした”渡辺貞夫もこれまた素晴らしい。
リチャード・ボナのベースが“主導する”メロディ・ラインが渡辺貞夫の肉体を通ることで,渡辺貞夫でもリチャード・ボナでもなく“渡辺貞夫&リチャード・ボナ”のアルト・サックスとして鳴っているのだ。

特に【ONE FOR YOU】【TEMBEA】【WAITING SONG】の3トラックは“ナベサダ生涯のレパートリー”候補になり得る大名演である。ナベサダ“らしい”メロディ・ラインがたまらない。
そんな中『MAISHA』好きの管理人の耳に止まるは【TIMES WE SHARED】の新ヴァージョン【SPRING − ALL BEAUTIFUL DAYS】。
カルロス・リオスでアルト・サックスな【TIMES WE SHARED】は“むせび泣ける”が,ホメロ・ルバンボでフルートな【SPRING − ALL BEAUTIFUL DAYS】は涙がじんわり“こぼれ落ちる”。
01. ONE FOR YOU
02. TEMBEA
03. BASIE'S AT NIGHT
04. REQUIEM FOR LOVE
05. WIND & TREES
06. KOULAMANITE
07. WAITING SONG
08. ISABELLE
09. JINDUNGO
10. WHEEL OF LIFE
11. SPRING - ALL BEAUTIFUL DAYS
(ヴァーヴ/VERVE 2003年発売/UCCJ-2026)
(ライナーノーツ/黒田恭一,渡辺貞夫,リチャード・ボナ)
(ライナーノーツ/黒田恭一,渡辺貞夫,リチャード・ボナ)
コメント一覧 (2)
ホント、お互いにリスペクトしているのが感じられますね!
この二人の関係、とても微笑ましいです。
そういえば、2曲目のTEMBEAは初代EOS KissデジタルのCM曲でしたね。
ナベサダが喫茶店のマスター役で出演していて、この曲が良い感じで流れていたのを覚えてます。
ボナとナベサダの幸せな時間、この作品から充分に感じ取れます。
「2曲目のTEMBEAは初代EOS KissデジタルのCM曲でしたね。
ナベサダが喫茶店のマスター役で出演していて、この曲が良い感じで流れていたのを覚えてます」。
私も当然覚えていますよ。EOSに嫉妬こそしましたが,ニコン党一筋としては指を加えて見ているだけでしたけど…。
ボナとナベサダの幸せな時間。ナベサダが幸せならファンも幸せになれるというものです。