
“出会うべくして出会った”渡辺貞夫とリチャード・ボナが一体となって,同じメロディ&同じリズム,を創造していく“幸福な”ライブ。
そう。『“ONE FOR YOU” SADAO & BONA LIVE』(以下『ワン・フォー・ユー』)こそ「ナベサダ・アフリカン」な“ヒューマン・ジャズ”の頂点!
『ワン・フォー・ユー』には渡辺貞夫が,ずっと探し求めていた「全てが生きた音楽」=アフリカン・ジャズの“理想系”がある。
ブルースっぽいのでもなくアーシーっぽいのでもない。本物のアフリカン・ジャズがついに“具現化”されている。
その意味でリチャード・ボナとの出会いは大きい。
ただし,管理人がそう言うのはリチャード・ボナが“天才”だからではない。リチャード・ボナは“ナベサダ・チルドレン”。だからこそリチャード・ボナとの出会いは大きいのだ。
『SADAO 2000』『WHEEL OF LIFE』の2作もそうだったが『ワン・フォー・ユー』も「アフリカ&アフリカ」しているわけではない。印象としてはむしろスマートで洗練された仕上がりに聴こえる。
リチャード・ボナが“超絶”ベース・テクニックを披露しているとはいえ,リチャード・ボナの役割はベーシスト以上に「音楽監督」。
全体を見渡し,必要な手数の分だけベースで“合いの手”を入れている。リチャード・ボナの特筆すべきバランス感覚。
リチャード・ボナは渡辺貞夫との共演ライブで,大好きな渡辺貞夫を「フィーチャリング」すべく“ジャズのビートで”ボトムを支えている。例えば【BONA PENDA】でのシンセとのキメキメ・ユニゾンの途中で飛び出す【SUMMERTIME】のメロディ。
そう。リチャード・ボナは,細かなジャンルの枠組みを超えて「ナベサダ・フュージョン」を最高の音楽として捉えている。
やったね。“ナベサダ・チルドレン”のリチャード・ボナくん。ナベサダと同じステージに立てて夢がかなってよかったね。
実に温かいステージング。実に質の高いステージング。リチャード・ボナが渡辺貞夫に“羨望の眼差し”を向ければ渡辺貞夫がリチャード・ボナの驚愕の才能へ“嫉妬”して見せる。
これぞ「互いへのリスペクト」を超えた「相思相愛」のトランス状態。かぁ〜,心が震えてくる〜。
リチャード・ボナのベースが小刻みに振動し,バンド全体を揺り動かしている。バンドが素晴らしくグルーヴしている。
リチャード・ボナの“超絶”はやはり凄かった。正確無比なバッキングと切れ味鋭いフレーズで“聴かせるベース”を完璧コントロール。ギター・レスの編成ゆえか,メロディ・ラインのユニゾンにも随時参加し,差し詰め「ギタリスト」のような演奏である。
一方のナベサダはどんなに吹こうとナベサダしている。ナベサダのアルト・サックスがいつになく“艶かしい”。そうして放たれる異次元のアドリブ。一切の迷いなしに,あれ程追い続けていたアフリカン・ジャズのフレーズが見事に飛び出している。いい。

【BASIE’S AT NIGHT】でのリチャード・ボナの“突っ込み”グルーヴ。そしてエティエンヌ・スタッドウィックのキーボード・ソロが半端ない。恐るべし才能。恐るべしカメルーン。
【SEE WHAT HAPPEN】でのリチャード・ボナのベース&スキャットのパフォーマンスに跳び上がる! イスから跳び上がる! 部屋中駆け回る! そして「ボナは天才」と絶叫する〜!
【CARINHOSO】。管理人の愛する“最高の”渡辺貞夫がこのトラックに凝縮されている。もはや多くを語るまい。
01. ONE FOR YOU
02. TEMBEA
03. BONA PENDA
04. I THOUGHT OF YOU
05. WAITING SONG
06. PONDA
07. LIFE IS ALL LIKE THAT (FOR SNOOPY & HIS
FRIENDS)
08. BASIE’S AT NIGHT
09. SEE WHAT HAPPEN
10. CARINHOSO
(ビクター/JVC 2006年発売/VICJ-61361)
(ライナーノーツ/都並清史,渡辺貞夫)
(ライナーノーツ/都並清史,渡辺貞夫)