
これって紛れもないライブ盤なのに,どうにもこうにもスタジオ録音っぽい。ジャズ・マニアな読者の皆さんに同じような感想を抱いた方はおられませんか?
というのも,荒削りな部分というか? ハプニング性というか? 無駄な部分がないというか? とにかく素晴らしい構成力。事前にリハーサルがあったにしても,こんなに熱狂的にしてバランスの良いライブ演奏は奇跡だと思うのだ。
( 注:こんな感想を抱く=すなわちチャーリー・パーカーな「即興芸術」ビ・バップではなく,分かりやすいビ・バップ「ハード・バップ」誕生の瞬間なのでしょうね。意図せずにもう結論が出てしまいましたが,管理人は『バードランドの夜』=「ハード・バップ誕生派」ではありませんので,別の結論登場のくだりまでもう少々お付き合いを… )
『コンプリート・バードランドの夜 VOL.1』と『コンプリート・バードランドの夜 VOL.2』の2枚はアート・ブレイキーの個人名義作であるが,その実体はリーダー不在のクインテット。音楽的リーダーはアート・ブレイキーではなくホレス・シルヴァーという見解が一般的である。しかし『バードランドの夜』=ホレス・シルヴァーの音楽でもないような気がしてどうにも納得いかない。
『バードランドの夜』で“気配漂う”アート・ブレイキーでもホレス・シルヴァーでもない「陰の総監督」の存在。そう。『バードランドの夜』を支配している“黒幕”はブルーノートの社長=社長と呼ぶよりもブルーノートの全てであるアルフレッド・ライオンの個性を強烈に感じるのだ。
例えるなら,テオ・マセオが作り上げたマイルス・デイビスに似たようなものである。
そう。アート・ブレイキーの側には常にアルフレッド・ライオンがいた。最初からいた。『バードランドの夜』からアルフレッド・ライオンがいたのだ。
アルフレッド・ライオンと言えば,ブルーノートの社長としてジャズで商売したのではない。ブルーノートという会社の立場を利用して,ジャズ・ファンとしての自身の欲望を追い求めた人物。言わば「ジャズの最前線で活躍した偉大なアマチュア」であった。
そんなアルフレッド・ライオンの“趣味丸出しな”プロデュースだからこそのアート・ブレイキーの名演であり,ホレス・シルヴァーの名演であり,クリフォード・ブラウンの名演であり,ルー・ドナルドソンの名演であり,カーリー・ラッセルの名演なのである。
アルフレッド・ライオンの一番人気を集めたクインテットだからこその『バードランドの夜』なのである。ジャズが身近に感じられる“成功の秘訣”なのである。
『バードランドの夜』というタイトル通り『バードランドの夜』は「夜更け」の名演集。しかし管理人には『バードランドの夜』は「夜明け」の名演集。
『バードランドの夜』はジャズ・ファンであればある程楽しめる。聴けば聴く程,ワクワク,ゾクゾク,血潮がたぎる。眠る前に聴いてしまうと興奮して寝つきが悪くなる。一日の始まりに聴くと元気が出る。元気が漲る“パワー・チャージ”な怒涛のジャズ。

『バードランドの夜』はアルフレッド・ライオンの音。ブルーノートの音。最強のジャズ・ファンの願望の音。
アルフレッド・ライオンを聴いて30年。ブルーノートを聴いて30年。『バードランドの夜』こそ,未だに“冷静に熱狂できる”スタジオ盤なライブ盤の“最右翼”。とにかくアルフレッド・ライオンの構成力が素晴らしい。ホントにいいんだってばぁ〜。
PS 『コンプリート・バードランドの夜 VOL.1』批評を読んで『コンプリート・バードランドの夜 VOL.2』批評での「ウンチク祭り」を期待した読者の皆さんがいらしたのでしたらごめんなさい。『コンプリート・バードランドの夜 VOL.2』批評の本文はアドリブログでしか読めない内容にまとめてみました。理由はいろいろと書き始めたら大長文になりそうな予感がしましたし,書こうと思った「ウンチク祭り」はプロのジャズ批評家さんの受け売りっぽくなりそうなのが嫌なので。いいや,本音はこれから続くブルーノートの名盤批評に「ウンチク祭り」の前例を作りたくなかったので。将来を見越して3時間分の執筆努力をごっそり割愛。めでたいめでたい。おめでとう。by エヴァンゲリオン風。
01. WEE-DOT
02. IF I HAD YOU
03. QUICKSILVER (alternate take)
04. NOW'S THE TIME
05. CONFIRMATION
06. THE WAY YOU LOOK TONIGHT
07. LOU'S BLUES
(ブルーノート/BLUE NOTE 1954年発売/TOCJ-7082)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,原田和典)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,原田和典)
コメント一覧 (2)
彼なくして、ブルーノートは存在しなかったのも事実ですし、ミュージシャン達の信頼も絶大な物だったのでしょうね。
ボクもブルーノートの大ファンなので、こちらでこの名盤を取り上げてくれたのは、本当に嬉しいです(^^)
クワガッタンさんのブルーノート好きが窺えてうれしいです。私もブルーノートとECMには目が(耳が)ありません。たくさん本とCDを買いました。
1500番台と4000番台がマイCDラックにずらっと並んでいるだけで幸福なのです。アルファベット順なのでAから始まるアントニオ・カルロス・ジョビン,アート・ブレイキーと,これから数年間は外国人のJAZZレビューに追われる予定です。スムーズ・ジャズはクワガッタンさんの「POCKET CITY」で楽しむこととして,自宅ではバップとモードとフュージョンを楽しもうと思っています。