
しかし,ブルーノートが誇るオルガニスト“凄腕な童顔(ベイビー・フェイス)”ベイビー・フェイス・ウィレットを絶賛しようものなら「なかなかやるなぁ」では怒られる。ここは是非とも「師匠,御見それしました」と深々と頭を下げていただきたい。
そう。ベイビー・フェイス・ウィレットのデビューCD『FACE TO FACE』(以下『フェイス・トゥ・フェイス』)は,童顔の幼子に“魂をえぐられたかのような”気分になる。
やってることは童顔のそれではなく,悪戯っ子がそのまんま大人になった「とっつぁん坊や」のあれである。
ここで確認しておくが,ベイビー・フェイス・ウィレットは確かに童顔である。しかしベイビー・フェイス・ウィレットが童顔なのは彼の容姿を指してではない。
オルガンという「黒くエグイ」楽器を,キンキンに華やかな音色へとフラッグシップした,その音楽性が“若い”のだ。ベイビー・フェイス・ウィレットのオルガンが,時にけたたましく時に不意打ちをかけて“GROOVYに”鳴りまくる。まるでオルガンではなくトランペットのように甲高く〜!
『フェイス・トゥ・フェイス』は,ベイビー・フェイス・ウィレットのリーダー作にして,ギターのグラント・グリーンとテナー・サックスのフレッド・ジャクソンを大フィーチャリングした,アーシーな雰囲気の大ソウル大会にして,ギターとテナー・サックスがテーマを歌いオルガンがソロを取る構図(勿論,オルガンはバックでも常時鳴り続けている)。
“一歩下がった”ベイビー・フェイス・ウィレットのオルガン・プレイに“童顔”を感じさせる展開でありながらも,ベイビー・フェイス・ウィレットのオルガンの存在感たるやもう…。
オルガンがバックでお遊戯を踊っている。アチョー,アチョー,と鍵盤が押されていく。う〜ん。これは「黒くエグイ」楽器=オルガンの音使いではない。
そして,ベイビー・フェイス・ウィレットがなにより凄いと思うのが“絶対王者”ジミー・スミスのように「オメメパッチリなメリハリ・メイク」で弾いていないのだから面喰う〜。
要はベイビー・フェイス・ウィレットのオルガンは,ギターとテナー・サックスのための“化粧下地”!
ベイビー・フェイス・ウィレットのオルガンがソウルな雰囲気を醸し出し,グラント・グリーンのブルージーなギターとフレッド・ジャクソンの野太いテナーの“厚塗り”を許している。
そう。ベイビー・フェイス・ウィレットの仕事ぶりが最高のポイント! ソウルフルでブルージにして,そうした言葉だけでは表現しきれない引っ掛かりがビンビン。一種のソフィストケイトされた“ぶっきらぼうな”語り口が“凄腕な童顔(ベイビー・フェイス)”にして「とっつぁん坊や」の二面性がベイビー・フェイス・ウィレットの個性である。
ベイビー・フェイス・ウィレットに感じるオルガン・ジャズの源流=R&Bやゴスペル・テイスト。オルガン・ジャズであるとともに,黒人のソウル・ミュージックであることを追いかけ続ける肌触りやノリが“若さ”なのだ。
『フェイス・トゥ・フェイス』でのオルガン・ジャズ・フォーマットを無視して,時に“下地役”のベイビー・フェイス・ウィレットが,ちゃぶ台をひっくり返し,果てには畳までひっくり返す大どんでん返しの大振る舞い! やっぱりオルガンなんだけどトランペット炸裂時のようなアドレナリン!
それ位に『フェイス・トゥ・フェイス』でのベイビー・フェイス・ウィレットのオルガン・ジャズは異質である。簡単に言えば“全包囲網仕掛けではなく単音のシングル・トーン仕掛け”!

流石はブルーノートでありアルフレッド・ライオンである。ジミー・スミスの次を狙う「次世代エース」はベイビー・フェイス・ウィレット以外に考えられなかったように思う。
ゆえに冒頭で書いたが,ベイビー・フェイス・ウィレットは「師匠」なのだ。「師匠,御見それしました」なのだ。ジミー・スミスとはブルーノートという同じ政党に属しつつも“亜流”な派閥に属するオルガニスト。
しかし,こんな天才,他の派閥の長老たちが放ってはおかない。ベイビー・フェイス・ウィレットは次作『STOP AND LISTEN』を最後にブルーノートを去る。そのまま引退→消息不明? もっともっとライオンの下で働ければ良かったのに…。
そんなこんなで,もしや管理人を「ベイビー・フェイス・ウィレット通」だと思われたかもしれません。最後にぶっちゃけ書きます。
管理人がベイビー・フェイス・ウィレットを聴いたのはグラント・グリーン目当てでした。グラント・グリーンからのベイビー・フェイス・ウィレットであり,フレッド・ジャクソンなのでした〜。
このようにして「ブルーノートのジャズメンの輪」が繋がっていくのでございます!
01. SWINGIN' AT SUGAR RAY'S
02. GOIN' DOWN
03. WHATEVER LOLA WANTS
04. FACE TO FACE
05. SOMETHING STRANGE
06. HIGH 'N LOW
(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-9055)
(ライナーノーツ/原田和典)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/原田和典)
(紙ジャケット仕様)
コメント一覧 (2)
グラントグリーンも活きが良くて、一瞬、どちらが主役?的な事を考えてしまうほど・・
でも、オルガンの音色って、とてもスピリチュアルですね。
また、ジックリと聴いてみたくなりました♪
おっとうれしや,クワガッタンさんもグラント・グリーン嗜好でしょうか?
『フェイス・トゥ・フェイス』でのグラント・グリーンはテーマ弾きが多めですが,ベイビー・フェイス・ウィレットのリーダー作にして十分グラント・グリーンらしさが楽しめますね。
グラント・グリーンのギターはジャズ系では私のNO.1でありましてグリーンのギターが鳴った瞬間,ブルーノートを感じてしまいます。
そんなグラン・トグリーンとベイビー・フェイス・ウィレットのオルガンの音色。スピリチュアルの2乗でもう大変な音空間が存在しています。
でも『フェイス・トゥ・フェイス』でベイビー・フェイス・ウィレットのパートナーとして語るなら グラン・トグリーン以上にフレッド・ジャクソンとマッチしていると思います。骨太なテナーと管楽器っぽいオルガンの妙に快感のツボを押されまくりです。クワガッタンも?