
ジミー・スミスの大量リリースがブルーノートの戦略であったならば,ベイビー・フェイス・ウィレットも大量リリースのはずである。しかし,そんな「期待の星」は2枚で終焉。これってなぜだろう?
ベイビー・フェイス・ウィレットの2枚目にして事実上の最終作=『STOP AND LISTEN』(以下『ストップ・アンド・リッスン』を聴いてライオンが下した「クビ宣告」の判断に同意してしまう非情な自分がいるのに気付く。
そう。名盤『フェイス・トゥ・フェイス』の再演を期待して聴いた『ストップ・アンド・リッスン』が外れ。『ストップ・アンド・リッスン』の印象は“こじんまり”&“地味”にまとまっている。
スケールが小さくなった理由はフレッド・ジャクソンのテナー・サックス抜きの,ギターとドラムとによるオルガン・トリオ・フォーマットの採用にあろう。グラント・グリーン好きにとっては出番が多くてかえっていいと思うのですが…。
『フェイス・トゥ・フェイス』に色濃かったベイビー・フェイス・ウィレット特有のR&Bやゴスペル・テイストは『ストップ・アンド・リッスン』でも健在。というか,R&Bやゴスペル・テイストがやけに耳につく。
『ストップ・アンド・リッスン』の音作りは,ジミー・スミスが築き上げたオルガン・ジャズとは別物である。ハッキリ言えばジャズの鍵盤ものではない。ジャズ・ピアノの延長としてのオルガン・ジャズとは“似て非なるもの”である。
「JAZZYでテクニシャン」なジミー・スミスと「ブルージーな情念」のベイビー・フェイス・ウィレット。
フレッド・ジャクソンのアドリブが聴けない『ストップ・アンド・リッスン』が物足りない。ベイビー・フェイス・ウィレットのアドリブは教会オルガン的であってジャズ的なアドリブに不慣れなのだろう。

全体として悪くはないが『フェイス・トゥ・フェイス』に比べてソロの詰めが甘いというか燃焼しきれていない。あのトランペットのような甲高い“シャウト”が聴こえない。キラー・チューンもない。
ただし洗練度が増しているのに“ソウルフルでアーシーな雰囲気”が損なわれていない。泥臭いとまではいかないバランス感覚が素晴らしい。ブルーノートの「次世代エース」のオルガニストの実力は伊達ではなかった。
このアーシーなオルガン・ジャズを“好むか好まざるか”で評価が変わる『ストップ・アンド・リッスン』。管理人の評価はライオンと同じはずである。
01. WILLOW WEEP FOR ME
02. CHANCES ARE FEW
03. JUMPIN' JUPITER
04. STOP AND LISTEN
05. AT LAST
06. SOUL WALK
07. WORK SONG
(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-6574)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)