EVERYBODY DIGS BILL EVANS-1  ・「ビル・エヴァンスからはたしかに多くのことを学んだ。彼はピアノが演奏されるべきやり方でピアノを演奏する」(マイルス・デイビス
 ・「ビル・エヴァンスはここ数年でいちばん気持ちのよいピアニストだ」(ジョージ・シアリング
 ・「ビル・エヴァンスは屈指の存在の一人だと思う」(アーマッド・ジャマル
 ・「ビル・エヴァンスには類い稀なオリジナリティとテイストがあるが,さらにすごいのは曲に対する構想を練る力で,彼が演奏すると,それがその曲の最終形と思わせるものがある」(ジュリアン・キャノンボール・アダレイ

 この超大物4人からの褒め言葉は,ビル・エヴァンスの2年振りのリーダー作『EVERYBODY DIGS BILL EVANS』(以下『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』)掲載の“推薦文”である。
 なぁんだ,レア物のCD帯のコピーじゃないか,と思うなかれ。この“推薦文”はリバーサイドからの公式発表としてCDジャケットを埋め尽くす“全面広告”になっている。CDタイトルからして「みんながビル・エヴァンスに注目している」の意味なのだから…。

 今でこそ,泣く子も黙る“ジャズ・ピアノの巨匠”ビル・エヴァンスであるが『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』がオリジナルCD2年振りの録音であることから窺い知れるように,当時のビル・エヴァンスは「知る人ぞ知る」存在にとどまっていた。
 そう。リバーサイドとしては,もっともっとマイルス・デイビスキャノンボール・アダレイジョン・コルトレーンのように売り出したかった。「ミュージシャンズ・ミュージシャン」のビル・エヴァンスを世間にアピールするために『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』は吹き込まれた。

 果たしてその出来であるが,管理人は『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』を駄盤とする。ビル・エヴァンスの個性の開花はまだまだ。師と仰ぐレニー・トリスターノの影響が窺え自己形成への過渡期の記録とぶった切る。
 ただしビル・エヴァンス“生涯の一曲”【PEACE PIECE】を除いて…。

 ズバリ【PEACE PIECE】一曲で『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』は価値がある。『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』は【PEACE PIECE】一曲のために買う価値がある。読者の皆さんにも是非是非是非【PEACE PIECE】だけは聴いてほしい。

 ここで暴言お許しを。管理人の元を通りすぎる多くのビル・エヴァンス・ファンの中に【PEACE PIECE】を知らないというファンがいる。別にその人には何も言ったりしないのだがビル・エヴァンスの話題はそれ以上盛り上げない。
 何も管理人の意見に迎合する必要はない。【PEACE PIECE】が嫌いでもいいと思う。しかし【PEACE PIECE】抜きにビル・エヴァンスを語ってほしくないのだ。

 …とここまで煽っておきながら,この記事は『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス批評なので【PEACE PIECE】については,次期【PEACE PIECE批評をお待ちくださいねっ。

EVERYBODY DIGS BILL EVANS-2 そんなこんなで【PEACE PIECE】が突出し【PEACE PIECE】の別アレンジ【SOME OTHER TIME】が引っ張る“COOL”な『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』。

 冒頭で推薦人名簿に名を連ねたマイルス・デイビスビル・エヴァンスについて,別の機会に次のように語っている。
 「ビルの演奏には,いかにもピアノという感じの,静かな炎のようなものがあった」。

 この“静かで白い炎”がECMに通じている。ビル・エヴァンスのCとFの永遠の反復が管理人の心の琴線をくすぐってくる。
 ピアノに乗りこんだビル・エヴァンスが『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』で新たな地平線を目指して出帆している。

  01. MINORITY
  02. YOUNG AND FOOLISH
  03. LUCKY TO BE ME
  04. NIGHT AND DAY
  05. EPILOGUE
  06. TENDERLY
  07. PEACE PIECE
  08. WHAT IS THERE TO SAY?
  09. OLEO
  10. EPILOGUE
  11. SOME OTHER TIME

(リバーサイド/RIVERSIDE 1977年発売/VICJ-61329)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,青木和富)
(紙ジャケット仕様)

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