
ゆえにビル・エヴァンスの代表作と勘違いして?ビル・エヴァンスの総本山であるピアノ・トリオを聴く前に,アルバム・タイトル『INTERPLAY』(以下『インタープレイ』)を聴いてみたという友人が管理人の周りには数人いる。もしや読者の皆さんの中にも?
まず最初に断言しておこう。『インタープレイ』の聴き所は「インタープレイ」ではない。「インタープレイ」よりもアドリブを聴くためのアルバムである。
『インタープレイ』はピアノ・トリオにトランペットとギターが絡んだクインテット編成の異色盤。クインテットを“調和良く鳴らす”ビル・エヴァンスの“ジャズメン魂”が最大の聴き所なのである。
「インタープレイ」とは,共演者の発するシンパシーを聴くことであり,感じることが出発点である。ゆえにあらかじめ(それが綿密ではないとしても&スリリングなアドリブで満ちているとしても)事前のパート分けを行なった時点で“互いの音で触発し合う”『インタープイ』ではない。
そう。ビル・エヴァンス一流の「インタープレイ」の“支配力”はピアノ・トリオ止まり。クインテット編成仕様までは手が“行き届いていない”。
そんな中,管理人の目を引くはギターのジム・ホールの存在である。ビル・エヴァンスとジム・ホールの「インタープレイ」と来れば,ほんの2か月前に吹き込まれた大名盤『アンダーカレント』。
もしやビル・エヴァンスの頭の中には『アンダーカレント』の「二匹目のドジョウ?」があったのでは? クインテットの立ち位置はビル・エヴァンス&ジム・ホールのデュオ+フレディ・ハバード+パーシー・ヒース+フィリー・ジョー・ジョーンズだったのでは?
そのビル・エヴァンスの目論見が崩れたのが“客演”のつもりで呼んだフレディ・ハバードの快演であり,パーシー・ヒース&フィリー・ジョー・ジョーンズの“黒い”ノリであった。
フレディ・ハバードがとにかく凄い。超絶技巧のトランペットがビル・エヴァンスにジム・ホールのギターを聞かせていない。
そしてパーシー・ヒースのベースとフィリー・ジョー・ジョーンズのドラムがビル・エヴァンスをプッシュし続けている。
もはや攻められっぱなしのビル・エヴァンスは“静”のジム・ホールに合わせるのではなく,フレディ・ハバードのフレッシュなフレージングとパーシー・ヒース&フィリー・ジョー・ジョーンズの“動”の黒ノリの乗せられ“バッパー気質丸出しな”高速フレーズでピアノを弾きまくっている。
事実【I’LL NEVER SMILE AGAIN】の2トラックのクレジットを見ると【テイク7】と【テイク6】。何度も試行錯誤を重ねてのレコーディングである。もうこうなると新鮮味も薄れ,主に感覚でプレイすることを求められる「インタープレイ」は成立しない。熟練のコンビネーション・チリバツ・ナンバー。

らしいのやら,らしくないのやら…。だからビル・エヴァンスはやめられない…。『インタープレイ』は外せない…。
管理人の結論。『インタープレイ』批評。
『インタープレイ』は「インタープレイ」を抜きにした,普通にハード・バップの名盤である。演奏もまとまりとしてはビル・エヴァンスの“手からこぼれる落ちる感じ”なのだが,その分5人の自由度が高くアドリブも勢いもあり申し分ないハード・バップ。
でも,でも,これがビル・エヴァンスかと問われると…。
01. YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC
02. WHEN YOU WISH UPON A STAR
03. I'LL NEVER SMILE AGAIN (take 7)
04. INTERPLAY
05. YOU GOT TO MY HEAD
06. WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMS
07. I'LL NEVER SMILE AGAIN (take 6)
(リバーサイド/RIVERSIDE 1962年発売/VICJ-60029)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,小西啓一)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,小西啓一)
コメント一覧 (4)
albumのタイトルが良いですよ。この紛らわしい『インタープレイ』を知っているか否かでBill Evans ファンを篩にかける事が出来る(笑)
自分にとってはペットと太鼓を聴くalbumな訳ですが、エヴァンスのらしくない様なでもらしい様なピアノも、聴き方次第で面白いですね。
「エヴァンスのらしくない様なでもらしい様なピアノ」。私は幻惑されているAタイプのマニアです。Bタイプの面白い聴き方を教えてくださ〜い。
時間のある範囲でやまchanさんのレクチャー・キボンヌです。
特にフィリージョーみたいなゴリゴリのハードバップドラマーに煽られるとルーツであるバップな部分が出てしまう。
でもってそこが面白いのでは?と(笑)
Tommy Flanaganも煽られると、Kenny Drewか?と思う程バリバリ弾きまくりますが、Bill Evans程の意外性はありません。
とはいえ、典型的なDon FriedmanとBill Evansが大好きな人には、バップ的なエヴァンスは詰まらないかも知れませんが…。
「根底にあるのは打楽器もしくは鍵盤楽器としてのピアノで、それが自身のtrio作品以外では出て来るんですよ」。
うっほっほ〜。素晴らしい分析力〜。説得力ありますね〜。
もう私から付け加える言葉などございません。エヴァンスのピアノは男の中の男っぽい美男子タッチですぐにそれと分かります。耽美的であってもバップ的であっても。
確かに『インタープレイ』の聴き所はエヴァンスの豊かな音楽性というよりもピアニストとしての技量や器の大きさなのかもです。大変参考になりました。