
ネイティブ・サン以前の峰厚介を聴いたことはなかった。ゆえに峰厚介=フュージョン・サックスのイメージのままソロ名義作(正確には峰厚介クインテット名義)を初めて聴いた。
『MAJOR TO MINOR』(以下『メイジャー・トゥ・マイナー』)を聴いた時の衝撃たるや。なんじゃこれ〜!であった。
か〜,なになにライナーノーツを読むと『メイジャー・トゥ・マイナー』は峰厚介17年振りのリーダー作。
そうかっ,時間が経って演奏スタイルが変化したんだ。最初はそう思った。しかし十数回聴き込むにつれ違う感情が頭をもたげてきた。そうしてついに確信した“ジャズメン”峰厚介!
そう。『メイジャー・トゥ・マイナー』によって,管理人の峰厚介のイメージが変化した。そして峰厚介個人だけでなくネイティブ・サンのイメージまでもが変化した。90°?
ネイティブ・サンの生命線=【SUPER SAFARI】がもはや軽快には聴こえない。ビートはハネ系のカクテル・フュージョンそのものだが,スリリングなエレクトリック・ジャズを聴いているような気分になってしまうのだ。恐るべし,峰厚介&本田竹廣!
まっ,個人的にはネイティブ・サンの峰厚介&本田竹廣の関係性はウェザー・リポートのウェイン・ショーター&ジョー・ザビヌルの関係性に当てはまる。本田竹廣が線を描いて峰厚介が色を付ける関係性。
だ・か・らネイティブ・サン時代の峰厚介は“和製ウェイン・ショーター”であった。しかし『メイジャー・トゥ・マイナー』に聴く峰厚介は“和製ソニー・ロリンズ”であった。
こう書けば伝わる? 最初からこう書き出せばよかった? ウェイン・ショーターからソニー・ロリンズへの変化はテナー・サックスの魅力を堪能できる豪快さ! 「男の中の男=峰厚介」参上!
しかし,この17年間で変化したのは峰厚介のサックス奏法ではない。峰厚介の“ジャズ・フィーリング”の変化だと思う。
本田竹廣が線を描いて峰厚介が色を付けるネイティブ・サンでの関係性が終了し,ソロとなりバンド・リーダーとなった峰厚介は「線も書くし色も付ける」。線引き作業を兼ねるようになった峰厚介の引く線は「野太い」。ソニー・ロリンズのようなスケールのデカイ構造物を書くようになった。
逆に言えば,峰厚介は『メイジャー・トゥ・マイナー』で,ネイティブ・サンから続いていた「色付け」作業をやめてしまったように思えてならない。

峰厚介クインテットにおける峰厚介の担当はひたすら基本線。王道から右にも左もそれることなく“悠悠自適”にテナー・サックスを吹きまくっている。もはやバックの音や全体のバランスは二の次だとでも言わんばかりにテナー・サックスのアドリブに心を割いている。
ジャズから出発し,フュージョンで活躍し,ジャズに傾倒する峰厚介。その転換点としての『メイジャー・トゥ・マイナー』。
やっぱり,人には歴史があるんだな。無駄な経験なんてないんだな。今の一日一日が未来の自分を作っていくんだな。
PS 『MAJOR TO MINOR』は,スイングジャーナル主催/ジャズ・ディスク大賞【日本ジャズ賞】を,大西順子の『WOW』と分け合う名盤なのですが,大西順子好きというただそれだけの理由で心情的に『WOW』と同格扱いはできません。『WOW』より格下の星4つとさせていただきました。あしからず。
01. MAJOR TO MINOR
02. MORNING AFTER
03. LAST SHOT
04. SASUKE
05. CHANGA
06. I REMEMBER GOKO
(ヴァーヴ/VERVE 1993年発売/POCJ-1195)
(ライナーノーツ/児山紀芳,渋谷毅)
★1993年度(第27回)ジャズ・ディスク大賞【日本ジャズ賞】受賞
(ライナーノーツ/児山紀芳,渋谷毅)
★1993年度(第27回)ジャズ・ディスク大賞【日本ジャズ賞】受賞
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