
しかし管理人から言わせれば,ジャズ・ピアノの巨人=ビル・エヴァンスに伴奏してもらえるとはトニー・ベネットは幸運な男である。
トニー・ベネットとビル・エヴァンスが共演した2枚のアルバム『THE TONY BENNETT/BILL EVANS ALBUM』(以下『トニー・ベネット & ビル・エヴァンス』)と『TOGETHER AGAIN』(以下『トゥゲザー・アゲイン』)の聴き所は,間違いなくビル・エヴァンスのピアノである。
あのトニー・ベネットをしてビル・エヴァンスのピアノに負けている。トニー・ベネット以上にビル・エヴァンスが“歌っている”。内省的なビル・エヴァンスがトニー・ベネット以上に“伝えてくる”。ピアノで語るメッセージが聞き手の心に訴えかける。
正直,管理人は『トニー・ベネット & ビル・エヴァンス』と『トゥゲザー・アゲイン』の演奏を通してビル・エヴァンスの“歌心”を初めて理解できたように思っている。
トニー・ベネットの伴奏者としてのビル・エヴァンスが“ビンビン”来ているのだ。
『トニー・ベネット & ビル・エヴァンス』と『トゥゲザー・アゲイン』の全41トラックが収録された『THE COMPLETE TONY BENNETT/BILL EVANS RECORDINGS』(以下『コンプリート・レコーディングス』)は,トニー・ベネットとビル・エヴァンスが2人して曲を作り上げたいく過程のドキュメントを聴くことができる。リハーサルの没テイクこそが“お宝”なのである。
構成は決まっている。ビル・エヴァンスの短いイントロ〜テーマにトニー・ベネットの歌〜ビル・エヴァンスのピアノ・ソロ〜トニー・ベネットの歌というパターン。
ビル・エヴァンスのソロ終わりに,トニー・ベネットがどこから入るかは事前に決められてあった。ゆえにビル・エヴァンスのソロは,その曲の構成に沿って盛り上がり“山場”を作っていく。これが完璧なのだ。

さらに唸らされるのは,トニー・ベネットとのコンビネーションで聴かせる“変幻自在の”ピアノ・ワーク。トニー・ベネットの歌声に切り替わる直前に「さぁ,どうぞ」と言わんばかりに,全速力のアドリブからごく自然な形で「歌がスタートした時のテンポ」に戻してくる。
例えるならシフトダウンとアクセル・ワークを巧みに操ってスムーズに減速したような感覚。だから「ああ,ここで歌が入ってくるぞ」と思わせてくれる。実に素晴らしい。
だからトニー・ベネットは幸運な男。読者の皆さんにも『コンプリート・レコーディングス』を聴いてほしい。史上最強の伴奏者と化したビル・エヴァンスの“上げ膳据え膳”の妙を聴いてほしい。ビル・エヴァンスは相当に“懐の深い”ジャズ・ピアニストである。
DISC ONE
≪THE TONY BENNETT/BILL EVANS ALBUM≫
01. YOUNG AND FOOLISH
02. THE TOUCH OF YOUR LIPS
03. SOME OTHER TIME
04. WHEN IN ROME
05. WE'LL BE TOGETHER AGAIN
06. MY FOOLISH HEART
07. WALTZ FOR DEBBY
08. BUT BEAUTIFUL
09. THE DAYS OF WINE AND ROSES
≪TOGETHER AGAIN≫
10. THE BAD AND THE BEAUTIFUL
11. LUCKY TO BE ME
12. MAKE SOMEONE HAPPY
13. YOU'RE NEARER
14. A CHHILD IS BORN
15. THE TWO LONELY PEOPLE
16. YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS
17. MAYBE SEPTEMBER
18. LONELY GIRL
19. YOU MUST BELIEVE IN SPRING
≪BONUS TRACKS FROM THE 1976 TOGETHER
AGAIN SESSIONS≫
20. WHO CAN I TURN TO?
21. DREAM DANCING
DISC TWO
≪ALTERNATE TAKES FROM THE 1975 THE TONY
BENNETT/BILL EVANS ALBUM SESSIONS≫
01. YOUNG AND FOOLISH (alternate, take 4)
02. THE TOUCH OF YOUR LIPS (alternate, take 1)
03. SOME OTHER TIME (alternate, take 7)
04. WHEN IN ROMA (alternate, take 11)
05. WALTZ FOR DEBBY (alternate, take 8)
≪ALTERNATE TAKES FROM THE 1976 TOGETHER
AGAIN SESSIONS≫
06. THE BAD AND THE BEAUTIFUL (alternate, take 1)
07. THE BAD AND THE BEAUTIFUL (alternate, take 2)
08. MAKE SOMEONE HAPPY (alternate, take 5)
09. YOU'RE NEARER (alternate, take 9)
10. A CHILD IS BORN (alternate, take 2)
11. A CHILD IS BORN (alternate, take 7)
12. THE TWO LONELY PEOPLE (alternate, take 5)
13. YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS (alternate, take
16)
14. YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS (alternate, take
18)
15. MAYBE SEPTEMBER (alternate, take 5)
16. MAYBE SEPTEMBER (alternate, take 8)
17. LONELY GIRL (alternate, take 1)
18. YOU MUST BELIEVE IN SPRING (alternate, take 1)
19. YOU MUST BELIEVE IN SPRING (alternate, take 4)
20. WHO CAN I TURN TO? (alternate, take 6)
(ファンタジー/FANTASY 2009年発売/UCCO-4052/3)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/ウィル・フリードウォルド)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/ウィル・フリードウォルド)
コメント
コメント一覧 (2)
ずいぶん前の記事に今更ながらの投稿お許し下さい。
トニー・ベネットのCDをレンタルしてきて、関する情報をwebで調べていたらセラビーさんのサイトに行き当たりました。
当方ビル・エバンスのファンですがこのCDは知りませんでした。で、早速amazonに手配し入手した次第。
感動しました!感動の内容を記述する術は持ち合わせませんが、ちあきなおみ全集から大好きな曲をAudioGate3ライト版でプレイリスト作成し聴き入った時の感じ?
兎にも角にも貴重な情報ありがとうございました。
ビル・エヴァンスが歌伴を務め上げたトニー・ベネットとの共作。感動的な名演ですよね。
私も感動の内容を記述する術は持ち合わせておりませんが,ninningerさんのきっかけになれたのでしたらうれしいです。今後ともよろしくお願いいたします。