
それくらい,ビル・エヴァンスとトゥーツ・シールマンスのインタープレイが突出している。叙情性や情感溢れる素朴な音楽イメージを吹き飛ばす,硬いピアノと疾走するハーモニカによる“男の美学”。聞き流してもよし&聴き込んでもよし=「聴き所の玉手箱」!
そう。『アフィニティ』はジャズの全史を見渡しても稀にみる“異色盤”にして大名盤なのである。
『アフィニティ』の成功の理由は「1にシールマンス,2にエヴァンス」である。トゥーツ・シールマンスのハーモニカがビル・エヴァンス“お得意の”リリシズムをかっさらう! 筆舌に尽くし難い哀愁を伴ったハーモニカが紡ぎ出すリリシズムが本家との共演で深みを帯びている。
対する“お株を奪われた形”のビル・エヴァンスが一歩も引いていない。いいや,いつも以上のリリシズム! ビル・エヴァンスの内に宿る秘められていたリリシズムが,トゥーツ・シールマンスの個性によって外界へと引き出されている。
ビル・エヴァンスとトゥーツ・シールマンスの「ロマン主義」が“爆発した”インタープレイがここにある。事実,他の3人の演奏も素晴らしいものだが,先に述べた通り記憶には残らない。ラリー・シュナイダーの【酒バラ】だけは存在感があるかなぁ。
それにしても「トゥーツ・シールマンス効果」は絶大である。基本ビル・エヴァンスはBGMにはならないのに『アフィニティ』だけはウィスキーをひっかけながら聞いても様になる。ボーッと聞き流してもグッと来る。緩く気楽なジャズ・アルバムの最高峰。
『アフィニティ』の真骨頂は“癒し”であり「涙」である。ボーッと無防備にBGMとして流していると,いつしか様々な思い出が浮かび上がって「涙」が無意識のうちに“零れ落ちて”しまう。目からの「涙」ではない。心から「涙」が零れ落ちてくる。ワ〜っではなく“1粒だけがポロリ”な感じ。
『アフィニティ』を聴き終える頃には,いろいろな心のしがらみがすっかり洗い流されている。聴いて良かった。このジンワリと温かな感覚はそう滅多に体験できるものではない。“ジャズを超えた”ジャズ・アルバムの最高峰。
思うに,ビル・エヴァンスも管理人と同様,トゥーツ・シールマンスのハーモニカを聞き流しての録音だったように思う。無心でピアノを弾いたのだと思う。メロディーがゆったりと響く雄大でロマンティックなピアノを弾いている。
当然タッチは超強烈なのだがいつものピアノ・トリオとは何かが違う。これがトゥーツ・シールマンスのハーモニカに癒された“素の”ビル・エヴァンスなのかもしれない。

ボーッと聞き流せてしまうとしても,ビル・エヴァンスがエレピを弾いているとしても『アフィニティ』は,巷で語られているようなフュージョン・アルバムなどでは断じてない。
『アフィニティ』にジャズを感じないファンは,ビル・エヴァンスのピアノを聴かずに,よく知られたポップ・チューンのメロディーを聴いているからであろう。
ズバリ『アフィニティ』の官能の美メロの聴き所は,メジャーとマイナーを行き来する瞬間の“間”にありますから〜。
トゥーツ・シールマンスの「覚醒を産み出す」クリエイトした大仕事が超最高〜。一音で世界旅行〜。一音でタイム・トリップ〜。
01. I Do It For Your Love
02. Sno' Peas
03. This Is All I Ask
04. The Days Of Wine And Roses
05. Jesus' Last Ballad
06. Tomato Kiss
07. The Other Side Of Midnight (Noelle's Theme)
08. Blue & Green
09. Body & Soul
(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1979年発売/WPCR-13177)
(紙ジャケット仕様)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/中山康樹)
(紙ジャケット仕様)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/中山康樹)
コメント
コメント一覧 (2)
キースのライブには行けないのですが、6日であれば時間がありますので、来れられるのであれば、アドレスにメールを頂ければ幸いです。
せっかく背中を押していただいたのに。すみません。昨日,友人には東京行かない旨断りを入れました。目指すは大阪フェステイバル・ホール。「トリオ最後の日本公演」見届けられるかどうかはオークションの価格次第な状態です。
それでホームズさんから受け取ったメアドはスパム対策のため削除させていただきました。後程個人的にメール差し上げますね。
パットの『Unityband』。サックスとギターが王者ですね。グッときます。