DOUBLE FACE-1 日本が誇る「ワールド・クラス」な2人のベーシスト桜井哲夫と来れば“チョッパー”なのだが青木智仁と来れば“スラップ”である。同じようで同じではない。このニュアンスの違いが読者の皆さんに伝わるだろうか?

 ベーシスト青木智仁のプレイは独特である。日本にはいないタイプの「セッションベーシスト」である。そう。青木智仁こそ“日本のマーカス・ミラー”その人である。
 本職が「セッションベーシスト」だからそうなのか? 青木智仁スラップベース・ラインは「超絶技巧」で,とにかく丁寧でマジメで何でも上手に弾きこなす。もう「ちょちょいのちょい」な感じなのだ。

 テクニック的には桜井哲夫が上だと思う。あんな“トリッキー”なベース・プレイは他の日本人ベーシストには真似できない。
 「超正統派」な青木智仁は「超絶技巧」を売りにはしていない。本気で弾いたら桜井哲夫マーカス・ミラーをも超えると思ったりもするのだがこの願いは叶わない。青木智仁は決してそれをしないからだ。

 ゆえに青木智仁ソロデビューCD=『DOUBLE FACE』(以下『ダブル・フェイス』)を聴いてニンマリした。そして大満足した。
 予想通り,青木智仁ベースは前に出ていない。いつも通り,しっかりとボトムを支えている。というか,この豪華参加メンバーをして前に出る必要はない。

 ギター角松敏生梶原順松原正樹今剛浅野祥之鈴木茂キーボード小林信吾難波正司島健ドラム村上秀一渡嘉敷祐一石川雅春パーカッション斎藤ノブサックス本田雅人小池修平原まことトランペット数原晋,今回はボーカル参加の岡沢章 ETC。

 ねっ,前に出るのは不可能でしょ? この人たちを目立たせてナンボなアルバムでしょ? そう。この豪華参加メンバーを含めて全てはプロデューサー=角松敏生青木智仁の計算である。スター・フロント陣を目立たせることで「自分が目立つ」。これぞ「セッションベーシスト」のソロ・アルバムの“王道”であろう。

DOUBLE FACE-2 構図は決まった。後は伸び伸び&思いっきりENJOYするのみ。この時点で“青木智仁オールスターズ”の大名盤誕生が決まったようなもの。主眼はあくまで「楽曲の完成度」。(出番は少ないが)文句なしの“スラップ”地獄であって,これは“チョッパー”地獄ではない。←力説
 フロントが“跳ねれば跳ねるほど”青木智仁の安定した職人技が耳につく。地味でシンプルなベース・ラインなのに聴けば聴く程魅力的なスラップベース。ク〜ッ。

 あっ,分かった。だからアルバム・タイトル=『ダブル・フェイス』なんなんだぁ。
 バンドの要=裏方ベーシストとしての青木智仁と“スラップベーシスト”としてソロイスト青木智仁の2つの顔。
 あるいは表の顔が「セッションベーシスト」で裏の顔が「音楽家」だったり「作曲家」だったり…。

 管理人は青木智仁の『ダブル・フェイス』=「表の顔も裏の顔も」大好きです。

PS ここまで書き上げた後に気付きましたが「ベーシストなのにベース弾きまくりではないパターン」は青木さん以上に桜井さんやマーカスの専売特許でした。お後がよろしいようで…。

  01. Triboro Bridge〜Memories of M.K.
  02. Mr.J.F.P
  03. Forgive Me
  04. Don't Ever Hurt Me
  05. Linda
  06. Amboseli
  07. Risa
  08. 砂の女
  09. Manhattan Love Affair
  10. With A Little Help From My Friends
  11. Risa Reprise

(BMGビクター/BMG VICTOR 1989年発売/M32D-1004)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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