
なぜ覚えているのかというと「絶対に有り得ない」と瞬間的に思ったからだ。理論家のビル・エヴァンスが野生児のフィリー・ジョー・ジョーンズを求めているとは到底思えなかったから…。
ビル・エヴァンス・トリオの歴代のドラマーの中には,確かにマーティ・モレルやジョー・ラバーベラのような“暴れん坊”がいるのだが,フィリー・ジョー・ジョーンズは“暴れん坊”の質が違う。フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムではビル・エヴァンスがリリシズムを語ることはできないに違いない。
論より証拠! 管理人はついに証拠を掴んだ! 『BILL EVANS TRIO AT THE VILLAGE VANGUARD−AUGUST 18,1967』(以下『ビル・エヴァンス・トリオ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード〜8. 18, 1967』)である! 聴いてみよ! 嬉々として楽しそうにピアノをドライブさせるビル・エヴァンスを!
『ビル・エヴァンス・トリオ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード〜8. 18, 1967』にリリシズムはない。ハード・バップである。“バッパー”ビル・エヴァンスの降臨ライブである。この第一原因こそフィリー・ジョー・ジョーンズにある。
名ドラマー=フィリー・ジョー・ジョーンズが“バッパー”ビル・エヴァンスのツボを押し当てる。ギンギンなビル・エヴァンスが快調に飛ばす。ビル・エヴァンスが“ウィントン・ケリーのように”リズミカルに跳ねている。スインギーな名演だと思う。
あっ,もしや本当にビル・エヴァンスはフィリー・ジョー・ジョーンズがお気に入りだったのかもしれない…。
しかしフィリー・ジョー・ジョーンズがビル・エヴァンス・トリオのレギュラー・ドラマーに鎮座していたとするならば,最高に甘美な【マイ・フーリッシュ・ハート】〜【ワルツ・フォー・デビイ】への流れは完成しなかったわけであり…。

PS 「何事もホドホドが丁度いい。何事もバランスが大事」PART2。『ビル・エヴァンス・トリオ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード〜8. 18, 1967』のバランサーがベースのエディ・ゴメス。いつもは弾きすぎるきらいのあるエディ・ゴメスが,ビル・エヴァンスのオン・ビートとフィリー・ジョー・ジョーンズのオフ・ビートの仲を取り持つ,真にベーシストらしい大仕事をしています。エディ・ゴメスの違った一面がモロに出ています。エディ・ゴメス・ファンにこそ『ビル・エヴァンス・トリオ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード〜8. 18, 1967』を聴いていただきたいと思います。
DISC 1
<1st Set>
01. In a Sentimental Mood
02. California, Here I Come
03. You're Gonna Hear From Me
04. Alfie
05. Gone With the Wind
06. Emily
07. G Waltz
08. Wrap Your Troubles in Dreams
DISC 2
<2nd Set>
01. In a Sentimental Mood
02. California, Here I Come
03. You're Gonna Hear From Me
04. Alfie
05. Gone With the Wind
06. Emily
07. G Waltz
08. Wrap Your Troubles in Dreams
09. On Green Dolphin Street
<3rd Set>
10. G Waltz
11. You're Gonna Hear From Me
12. Wrap Your Troubles in Dreams
13. Gone With the Wind
14. Emily
15. G Waltz
(ヴァーヴ/VERVE 2004年発売/UCCV-4113/4)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/杉田宏樹,ピーター・キープニュース)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/杉田宏樹,ピーター・キープニュース)