TOUCHDOWN-1 「ミスター・スムーズ・ジャズ」。この栄誉ある称号を管理人はボブ・ジェームスに差し上げたいと思う。

 現役バリバリのフォープレイでの活躍に対してではない。80年代のデヴィッド・サンボーンアール・クルーとのコラボに対してでもない。この称号は70年代から一貫して継続してきたボブ・ジェームスならではの「BGM命」に対してのものである。

 70年代のフュージョン・シーンを考えると,よりファンキー,よりメロウ,よりポップ指向。この流れに便乗せずに「BGM命」を徹底してやり続けたのがボブ・ジェームスであった。あくまでもソフィスティケイトされた楽器の対話を楽しむ「BGM命」であった。

 『TOUCHDOWN』(以下『タッチダウン』)の音造りこそ,70年代ボブ・ジェームス・サウンドの集大成! 激しい演奏は一切なし。アルバムのどこを聴いてもどれも優しいメロディーが非常に心地良い。親しみやすく分かりやすいボブ・ジェームス・サウンドが都会的に洗練されている。要は“軽さの本物”なのだ。

 とはいえ“軽さの本物”が生み出される裏では贅沢な音造りがなされていてブラスストリングスの物量作戦! 大勢のゲスト・ミュージシャンがボブ・ジェームスの細かなディテールの指示に沿って“一芸”を繰り出している。
 そう。デヴィッド・サンボーンアール・クルーヒューバート・ロウズエリック・ゲイルハイラム・ブロックロン・カータースティーヴ・ガッドラルフ・マクドナルド ETCの個性的なジャズメンを集めて,自分の掌の上で遊ばせている感じ?

 そう。『タッチダウン』こそ,ボブ・ジェームスの“多重人格”アンサンブル!“軽さの本物”がボブ・ジェームスのフォーマットの中に見事に収められている。
 これぞボブ・ジェームスの作曲能力と編曲能力の味! 適度なポピュラー性とリスナーを心地よくさせるメロディの繰り返しと明確なリズム・パターン! この流れがフォープレイにまで引き継がれているわけなのだから「ミスター・スムーズ・ジャズ」=ボブ・ジェームスとは“アッパレ”なジャズメンである。

TOUCHDOWN-2 ただし『タッチダウン』は今の耳には古すぎる。典型的なリフとバックアップがセオリー通りの教科書的&エレピの音色が70年代。“軽さの本物”はモロに時代の音が出る。

 そう。ボブ・ジェームスエレピはいつの時代でも目鼻バッチリの装飾系! 結構,流行に敏感なエレピ
 本質的には絶対にブレない「BGM命」+流行を取り入れるアレンジ・センス=「ミスター・スムーズ・ジャズ」!

  01. ANGELA (THEME FROM "TAXI")
  02. TOUCHDOWN
  03. I WANT TO THANK YOU (VERY MUCH)
  04. SUN RUNNER
  05. CARIBBEAN NIGHTS
  06. WITH THE ONE YOU LOVE

(タッパンジー/TAPPAN ZEE 1978年発売/VICJ-61514)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/成田正)

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