
このメンバー5人の選択が聴き込めば聴き込む程にハマッテいる。この5人の組み合わせこそ,向井滋春の魅力を引き出すための「ベストの布陣」であった。向井滋春ソロ名義の『J5』は,J−ジャズ史上指折りの“企画賞”ものの1枚だと思う。
一般的にトロンボーンという楽器は,柔らかくまろやかな輪郭が特徴の音に厚みを加えるハーモニー担当。アドリブは出来てもリードはできない,というのが相場である。
ゆえにジャズ・トロンボーンは「激薬」となる。徹底的にソリッドでアグレッシブで重くなる。ここがジャズメン=向井滋春を聴く最大の魅力であろう。
そんな向井滋春が,こちらも“ビビッドな”ジャズ・ピアニスト=大西順子と“タイマンを張った”のが“企画賞”『J5』の目玉!
大西順子を批判するやからは『J5』での演奏を聴き逃しているのではあるまいか? 向井滋春と“タイマンを張りつつも”実に見事なバッキングでケンカ相手を立てている。ソロ名義の大西順子は“男”であるが,サイドメンの大西順子は“女”なのである。
低音部を多用する不協和音的なテンションの混じる独特のコード感覚。タイトながらダイナミックにスイングするリズム…。
女性に戻った?大西順子のジャズ・ピアノが渋い。終始自分を抑えつつも,ここぞの一発で放つ“大仰なアドリブ”で天下を取る! 大西順子の“100発100中の”アドリブが,ボディ・ブローからのアッパー・カットのような展開で全体の印象を決定付けている。大西順子のジャズ・ピアノが向井滋春のジャズ・トロンボーンを“尻に敷く”カカア天下の“ケンカ・セッション”!

大西順子の計算されたバッキングに煽られまくった向井滋春の“飛翔っぷり”が超・最高! スパークするジャズ・トロンボーンが“すすり泣く”瞬間に見せた大西順子の“男の顔”がハイライト! 『J5』のハイライトは大西順子の時代の音! 向井滋春さん,ごめんなさい。
01. ON REFLECTION
02. SPIRITUAL CALLING
03. STRETCH OUT
04. SERENITY
05. WOMAN CHILD
06. MALDOROR
07. BERLIN
(サムシンエルス/SOMETHIN'ELSE 1994年発売/TOCJ-5557)
(ライナーノーツ/藤本史昭)
(ライナーノーツ/藤本史昭)
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