
ブランフォード・マルサリスの2NDアルバム=『ROYAL GARDEN BLUES』(以下『ロイヤルガーデン・ブルース』)に漂う“伝統と斬新さの同居”が世界中の熱心なジャズ・ファンを熱狂させた。
もはや「神輿」状態。ウイントン・マルサリスのNEXTはブランフォード・マルサリスを担ぎ上げ〜。
うん。でもそうなる気持ちも理解できる。“天才”ウイントン・マルサリスに共感できなかったジャズ・ファンでも“秀才”ブランフォード・マルサリスになら共感できる。
“身近なお兄さん”ブランフォード・マルサリスに「ジャズの未来」と「自分の未来」を思い重ねる。それが日本のジャズというものだ。
『ロイヤルガーデン・ブルース』におけるブランフォード・マルサリスのテナー・サックス&ソプラノ・サックスには「ジャズの伝統」が見え隠れしている。
NO。ジャズだけではない。スティングとの共演を得て洗練された,ポップでロックでブルージーなスタイル,までをも呑み込んで「THIS IS BRANFORD MARSALIS」のサックスが鳴っている。
この全てが新鮮で爽快なのに「重心が低い」テナー・サックス&ソプラノ・サックスがたまらない!
そう。この「重心の低さ」こそ“新伝承派”ブランフォード・マルサリスの真骨頂! モード・スケール・エクササイズ的なメカニカルなフレーズは生まれ育った,ウイントン・マルサリス・クインテットでも活躍した,拭い去れない家庭環境による影響があろうが,そこにスティングのバンド・メンバーとしても活躍した「ジャズの伝統」を超えた「新世代の日常」の音まで聴こえてくる。

『ロイヤルガーデン・ブルース』はブランフォード・マルサリス版“逆バック・トゥ・ザ・フューチャー”。
新時代のアプローチにまず耳が奪われるが,繰り返し聴き込むたびに感じる「ジャズの伝統」。
「昔の古いジャズって,こんなに新しかったんだ!」。ブランフォードよ,ありがとう。
01. SWINGIN' AT THE HAVEN
02. DIENDA
03. STRIKE UP THE BAND
04. EMANON
05. ROYAL GARDEN BLUES
06. SHADOWS
07. THE WRATH OF TAIN
(CBSソニー/CBS/SONY 1986年発売/32DP 637)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
(ライナーノーツ/小川隆夫)