
【MR.STEEPEE】は【MR.P.C.】であるのだろうし【THE BALLAD OF CHET KINCAID】は【SO WHAT】であるのだろうし…。
「THIS IS BRANFORD MARSALIS」のビッグ・ネームにして,ジョン・コルトレーンのフレーズを完コピしたものをアルバム化してしまう手法もかなり大胆極まりない。
いいや,そんなこと管理人が言わなくても周りもみんな分かっている。ブランフォード自身も分かっている。腹が据わったのだ。覚悟を決めたのだ。
そう。ブランフォード・マルサリスは,ジョン・コルトレーンの「研究成果」に自信を持っている。先行するマイケル・ブレッカーの独走に待ったをかけるために?
邪心であるが『クレージー・ピープル・ミュージック』をマイケル・ブレッカーがどんな思いで受け止めたのかに一番の関心があるのだが…。
『クレージー・ピープル・ミュージック』におけるブランフォード・マルサリスのジョン・コルトレーン「研究」は素晴らしい。フレージングの成り立ちが「コルトレーン式」であるのは当然として「楽器ではなく心で演奏する。魂で演奏する」ジョン・コルトレーンの“精神性”が色濃く乗り移っている。
ベースのボブ・ハースト,ドラムのジェフ・ワッツ,ピアノのケニー・カークランド(ケニー・カークランドがこれまた最高!)とジョン・コルトレーンが共演していると思える瞬間が多々ある。
いや〜『クレージー・ピープル・ミュージック』を聴いていると,ジョン・コルトレーンが「現代に甦った」ような錯覚を抱く。それほどまでにブランフォード・マルサリスの演奏にジョン・コルトレーンの魂が“宿っている”。

ジョン・コルトレーンを追いかけ続けたブランフォード・マルサリスが『クレージー・ピープル・ミュージック』でジョン・コルトレーンに追いついた。
ジョン・コルトレーンに追いついた瞬間,ウイントン・マルサリス・バンドのレギュラー・メンバー=ボブ・ハーストとジェフ・ワッツがブランフォード・マルサリスを見つめている。
ジョン・コルトレーンを追いかけ続けたブランフォード・マルサリスが『クレージー・ピープル・ミュージック』で,弟・ウイントン・マルサリスにも追いついた。
01. SPARTACUS
02. THE DARK KNIGHT
03. WOLVERINE
04. MR. STEEPEE
05. ROSE PETALS
06. RANDOM ABSTRACT
07. THE BLLAD OF CHET KINCAID
(CBSソニー/CBS/SONY 1990年発売/CSCS 5196)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
(ライナーノーツ/小川隆夫)