
通常であれば,あのまま「メインストリート・ジャズ」の王道を走り続けて“新伝承派”のリーダーを目指してもよいはずであるが…。
『CRAZY PEOPLE MUSIC』後のブランフォード・マルサリスの振り幅が凄い! スパイク・リーのサウンド・トラック『MUSIC FROM MO’ BETTER BLUES』! 『モ’・ベター・ブルース』『鬼ババを殺せ』で映画俳優デビュー! そして全米NBC「トゥナイト・ショー」のミュージック・ホスト就任!
いや〜,スティングのバンド・メンバー時代から,同じ兄弟にして,ブランフォードはウイントンとは対極のキャリアを積み重ねてきていたが,ことソロ・アルバムに関してはウイントンと同じく「メインストリート・ジャズの王道」を追及していたわけで…。
どっちのブランフォード・マルサリスが本当のブランフォード・マルサリスなのか,理解不能に思う。
そうして届けられた“爆弾”が『I HEARD YOU TWICE THE FIRST TIME』(以下『ブルース・ウォーク』)。
今度はブルースですよ。B.B.キングですよ。一体なんで&なんでこうなるの〜。
世評的には『ブルース・ウォーク』は大名盤。なんたってグラミー受賞(最優秀器楽ジャズ・グループ部門受賞)。
しか〜し『ブルース・ウォーク』に対する管理人の評価は駄盤である。事実『ブルース・ウォーク』以降,あんなに好きだったブランフォード・マルサリスへの興味が失せてしまった。
『ブルース・ウォーク』の本質は,完全なるブルース・アルバムではない。ベースのボブ・ハーストとドラムのジェフ・ワッツ擁するレギュラー・トリオでの演奏や,ピアノのケニー・カークランドが加わったカルテットでの演奏が3割はある。
そうしてこれも意味不明なのだが,反“新伝承派”に振れたにも関わらずウイントン・マルサリスがゲスト参加。この2人の関係性は今もって謎である。
そう。『ブルース・ウォーク』の本質は“ジャズ・テイスト”なブルース・アルバム。
別に目くじら立てることもないのだが“ジャズ・サックス・プレイヤー”ブランフォード・マルサリスへの期待値が高かっただけに「裏切られた気分」がMAX。

中原仁と小川隆夫が共通してライナーノーツで指摘している通り「ジャズもブルースも根っ子は同じ」なのも分かっている。
でもそれでもどうしても「NO THANK YOU」なのだ。
管理人がブランフォード・マルサリスに求めているのはアドリブである。ジョン・コルトレーン,ソニー・ロリンズ,ウェイン・ショーターへのオマージュを感じさせつつも,ブランフォード・マルサリスだけが吹き切ることのできるアドリブがある。
果たしてそのアドリブは,絶対に「ジャズ/フュージョンの文脈」でなければ吹き切ることはできない!
01. Brother Trying To Catch A Cab (On The East Side)
Blues
02. B.B.'s Blues
03. Rib Tip Johnson
04. Mabel
05. Sidney In Da Haus
06. Berta, Berta
07. Stretto From The Ghetto
08. Dance Of The Hei Gui
09. The Road You Choose
10. Simi Valley Blues
(ソニー/SONY 1992年発売/SRCS 5976)
(ライナーノーツ/中原仁,小川隆夫,デルフィーヨ・マルサリス)
(ライナーノーツ/中原仁,小川隆夫,デルフィーヨ・マルサリス)