
当初の目的通り『THE SEXTET』は「大西順子聴き」。それも「狂い聴き」!
セクステットの重厚な音から大西順子のピアノだけを抜き出して聴く“極意”を身に着けた。さすがに3管との共演ではピアノのリズム隊入りは避けられないが,その“存在感を消したはずのピアノ”にソロの順番が回ってくれば大西順子の独壇場! 大爆発の度合いはピアノ・トリオを超えている。
…と,ジャズ・ワークショップのリーダー=大西順子について語ろうと思えばいくらでも語れてしまう。でもジャズ・ワークショップはそんな“あまっちょろい”グループではない。
発足当初は大西順子のワンマン・バンドだったのかもしれないが,バンドが成長すると“あの”大西順子をもってしても止められない圧倒的なスケール感が凄すぎる。
あの勢いをして「ジャズの実験」を行なう「ジャズの研究室」こそ「ジャズ・ワークショップ」の真髄である。
ゆえに『THE SEXTET』の本質とはセッション・アルバムである。
ピアノの大西順子,トランペット&フリューゲル・ホーンの岡崎好朗,アルト・サックス&フルートの多田誠司,テナー・サックスの川嶋哲郎,ベースの荒巻茂生,ドラムの原大力というJ−ジャズ界の若武者6人が,時に個性をぶつけ合い時に擦り寄りながら創造する,新たなるジャズの模索,即ち「ジャズ・ワークショップ」である。
『THE SEXTET』は大西順子の発案で,1人3曲を作って集まり演奏してみる「研究会方式」という目論見であって,本当はもっとクオリティの高い楽曲もあったことだと予想するが,完成度よりも斬新なアイディアを優先したというか,なんだか凄いものが出てしまった,と思わせる7トラックが選曲されたいう感じ。
願わくば,お蔵入りした正統派のオリジナル集も,是非,聴いてみたいものである。お蔵の方にウナサレタリしたりして〜。

ざっくり聴いた感じでは,どこかで聴いた感じがするが,真剣に聴き込んでいくと,これでもかと言わんばかりに次々と曲が展開していく仕掛けに気付いては聴く者を圧倒させ,J−ジャズもここまで来たか,と思ってしまう。
『THE SEXTET』は聴いていて勿論楽しいのだが,それよりも“しんどい”が先に来てしまうアルバムではある。
同じものを,いいや,似たものでもいいのでとにかく産み出そうと,どんなにもがこうとも2度と産まれやしない,大西順子の“女王の産物”がジャズ・ワークショップ・プロジェクト。
ジャズ・ワークショップがマジでカッコイイ。マジでヤバイ。
01. PRINCESS SWALLOW
02. BENNY'S BAG
03. PRELUDE TO TORNADO
04. MU-JIKO MU-IHAN
05. MARINE SNOW
06. THE LONLEY BASSMAN BLUES
07. PORTRAIT IN BLUE
JAZZ WORKSHOP
JUNKO ONISHI : Piano
YOSHIRO OKAZAKI : Trumpet
SEIJI TADA : Alto Saxophone
TETSURO KAWASHIMA : Tenor Saxophone
SHIGEO ARAMAKI : Bass
DAIRIKI HARA : Drums
(サムシン・エルス/SOMETHIN' ELSE 1997年発売/TOCJ-5586)
(ライナーノーツ/藤本史昭)
(ライナーノーツ/藤本史昭)
アモス書3章 神の処罰について知らせる
PAT METHENY GROUP 『スピーキング・オブ・ナウ・ライヴ・イン・ジャパン』