- ブログネタ:
- ジャズ/フュージョン批評 に参加中!

これをやると上原ひろみ単独の場合以上に,上原ひろみにチック・コリアを感じ,ブラッド・メルドー単独の場合以上に,ブラッド・メルドーにキース・ジャレットを感じることができるからだ。
そしてブラッド・メルドーの名盤群の中でも一番「ブラッド・メルドーの中のキース・ジャレット」を感じるのが『THE ART OF THE TRIO VOLUME ONE』(以下『アート・オブ・ザ・トリオ VOL.1』)である。
『アート・オブ・ザ・トリオ VOL.1』におけるブラッド・メルドーのピアノが「ウルトラ・オーソドックス」。スタンダードをしっかり歌い上げ,しっとりと聴き所をまとめている。
そう。ジャズ・スタンダードだけが放つことのできる永遠の憂いを響かせている。もう・た・ま・ら・な・い。
ブラッド・メルドーの「基本性能」の高さが感じられる。お得意のアクロバティックな奏法など用いなくとも『アート・オブ・ザ・トリオ VOL.1』における「ウルトラ・オーソドックス」路線だけで“天下”を獲れる。ブラッド・メルドーの「底なしの実力」が感じられる。
『アート・オブ・ザ・トリオ VOL.1』のハイライトこそ【BLACKBIRD】に溢れる“みずみずしさ”。
この“みずみずしさ”こそが若かりし日のキース・ジャレットの特徴であり,ゲイリー・ピーコックとジャック・デジョネットと初めて組んだ日のキース・ジャレットそのものである。
キース・ジャレットが【BLACKBIRD】を弾いたとしたら,多分,ブラッド・メルドーの【BLACKBIRD】っぽくなると思わせてくれる。
そして【BLACKBIRD】の名演で思い出すのが木住野佳子。ゆえに木住野佳子→ビル・エヴァンス→キース・ジャレット→ブラッド・メルドーの無限ループ。
ねっ,ブラッド・メルドーにキース・ジャレットを感じるでしょ?

『アート・オブ・ザ・トリオ VOL.1』は,ジャズ・ピアノの“酸いも甘いも”知り尽くした者の演奏である。
一般的には,経験を重ね,無駄なフレーズを弾かなくなり,徐々にオーソドックスな演奏スタイルへと辿り着くものだと思うが“天才中の天才”ブラッド・メルドーの場合はスタートからしてゴールのようなジャズ・ピアノ。
『アート・オブ・ザ・トリオ VOL.1』は,完璧に緊張と緩和のバランスをコントロールしたブラッド・メルドーのピアノ・タッチが冴えに冴え渡る大名盤。
この“絶大なる安心感”がキース・ジャレットとブラッド・メルドーを結び付けているのだと思う。
01. Blame It On My Youth
02. I Didn't Know What Time It Was
03. Ron's Place
04. Blackbird
05. Lament For Linus
06. Mignon's Song
07. I Fall In Love Too Easily
08. Lucid
09. Nobody Else But Me
(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1997年発売/WPCR-971)
(ライナーノーツ/吉村浩二)
(ライナーノーツ/吉村浩二)
コメント