
そう。『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』批評と来れば,モダン・ジャズ史上屈指の人気曲【クレオパトラの夢】批評。エキゾチックでロマンチックで軽快な明るいバー・カウンターのテーマ曲…。
管理人が『ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.1』批評で【ウン・ポコ・ローコ】批評をやったと同じように,皆が皆【クレオパトラの夢】の絶賛記事で埋め尽くされてしまう。
でもでも『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』批評=【クレオパトラの夢】批評では勿体ない。わざわざ前置きを書かせていただいたのはそのためである。
バド・パウエル演奏レベルは前期に劣る。でも泣けるのだ。陽気なアルバムなのに泣けてくるのだ。バド・パウエルのハートを感じるのだ。「俺に残されたのはジャズ・ピアノを弾くことだけだ」と言わんばかりの集中力の高さは,必死に内面の葛藤を打ち消そうとする不安の表われに聴こえてくる。ピアノを上手に弾くという行為に“すがりつく”かのように…。
うん。そうなのだ。『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』というアルバムは,後期パウエルの「アイデンティティ」。
『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』の聴き所は“人間”バド・パウエルなのである。
ゆえに『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』は“雰囲気を味わう”アルバムなのだと思う。
『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』が醸し出す“独特の雰囲気”は,他のバド・パウエルの諸作では味わえないからこそ,長らくパウエル・ファンから愛され続けてきたのだと思う。
この“独特の雰囲気”を説明するのは難しい。強いて言えば「ジャケット通りの内容」とでも言うべきか? ジャケットのほの暗く“蒼い”トーンそのもののピアノ・トリオ。
後期パウエルに“ピアノの独り勝ち”はない。『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』も例外ではなく『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』の“独特の雰囲気”作りにベースのポール・チェンバースとドラムのアート・テイラーの名演は外せない。
バド・パウエルの,ほとんどぶっ通しの重量級のソロ演奏のバックで,ポール・チェンバースがブリブリとしてゴリゴリしていて暴れているのに実は繊細で歌心のあるメロディアスなベースを弾けば,アート・テイラーの心地良いスイング感&荒々しいブラシのアクセントが実に効いている。4ビートで進行するマイナー・ブルース&ビ・バップの“カラッとした”哀愁リズムの典型なのである。

パウエル・ファンだけではない。もっと言えばジャズ・ファンだけでもない。普段ジャズなど滅多に聞かない音楽ファンにとっても愛聴盤に成り得る内容だと思う。
そう。『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』こそ,真に「ジャズの入門盤」。スタイルが古くなろうとも,ピアニストとしての腕が落ちようとも,今でも光り輝き「ジャズの定番」として聴き継がれている「稀有なる名盤」。
勿論『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』を気に入っただけで「バド・パウエルが分かった」「ジャズ・ピアノが分かった」と思い込むのは早合点に違いないが,それでも「ジャズって難しくないんだ」と思っていただけたならバド・パウエルも本望なのだと思います。
管理人の結論。『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』批評。
【クレオパトラの夢】抜きにして星5つの『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』。ここに【クレオパトラの夢】が入っているのだから『ザ・シーン・チェンジズ/ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.5』は超鉄板!
PS 我ながら大好きな【クレオパトラの夢】抜きによくぞ完走できました。なぜなら保育園での伴奏風な【ボーダリック】が最高だから〜!
01. CLEOPATRA'S DREAM
02. DUID DEED
03. DOWN WITH IT
04. DANCELAND
05. BORDERICK
06. CROSSIN' THE CHANNEL
07. COMIN' UP
08. GETTIN' THERE
09. THE SCENE CHANGES
(ブルーノート/BLUE NOTE 1959年発売/TOCJ-9004)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,大村幸則)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,大村幸則)
(紙ジャケット仕様)