
そして『BUD SHANK−SHORT ROGERS−BILL PERKINS』(以下『昼と夜のバド・シャンク』)のおかげである。
『昼と夜のバド・シャンク』とは『昼のバド・シャンク』である1954年3月の演奏と『夜のバド・シャンク』である1955年5月の演奏の合体盤であって『昼』はショーティ・ロジャースとのクインテットで『夜』はビル・パーキンスとのクインテット。
バド・シャンク以外は誰もメンバーが重複していないのに統一感を感じるのは流石である。
この辺りは『昼と夜のバド・シャンク』のジャケット写真が意味深であって,全く同じ風景の『昼と夜』。後付だと思うのだが,今となってはアートワークの大勝利である。
つまり,白と黒のイメージで全く異なって見えるのに同じ場所。同じバド・シャンク。う〜む。我ながら思索的で素晴らしい?
いいや『昼と夜のバド・シャンク』が素晴らしいのは,単純に演奏が素晴らしいのであって,こんな「こじつけの解説」など気にされなくて構わない。
『昼のバド・シャンク』は,能面のように無表情なショーティ・ロジャースのフリューゲル・ホーンと表情豊かなバド・シャンクのサックスとフルートに対比が絶品の組み合わせ。
『夜のバド・シャンク』は,互いに多芸なビル・パーキンスとバド・シャンクによる,アルト・サックス,テナー・サックス,バリトン・サックス,フルートの楽器持ち替えが絶品の組み合わせ。

『昼と夜のバド・シャンク』は『昼』だけではなく『夜』になっても明るい演奏が続いていく。1枚聴き終わる頃には1日の疲れが流されている。何と!翌日の疲れも流されている。これは癒しの実体験である。
西海岸の青い空のような“カラットした”サックスの音色で,日本人好みの“湿気を帯びた”メロディーが淀みなく流れ続けるジャズ。ほんの一滴の毒気も混じっていない軽快なジャズ。連綿と続く“気分上々”なジャズ。せーの,ぱるるんるん♪
01. Shank's Pranks
02. Casa De Luz
03. Lotus Bud
04. Left Bank
05. Jasmine
06. Just A Few
07. Paradise
08. Fluted Columns
09. I Hear Music
10. Royal Garden Blues
11. A Sinner Kissed An Angel
12. It Had To Be You
13. Fluted Columns (alternate take)
(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1955年発売/TOCJ-9333)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
コメント一覧 (2)
一番好きなのは"Fluted columns"ですが、LPには別テイクは入っていません。なのでCDも買いました。わざわざデッキ or プレーヤで再生しなくても良いくらい頭のなかに息遣いも含めた演奏が蘇ってきます。
おおっ,私と同じく平田さんも『昼と夜のバド・シャンク』にやられた口なのですね。
『昼と夜のバド・シャンク』の素晴らしさを感じられたからこそ,他のウエストコースト・ジャズのスターたちの眩しい演奏を受け入れることができました。
今でも個人的にウエストコースト・ジャズの最初の1枚は『昼と夜のバド・シャンク』としてお勧めしております。
それにしても若い頃に聞いたLP。完璧に頭の中で再現できますよね。平田さんの「頭のなかに息遣いも含めた演奏が蘇ってきます」は正しく同感であります。
さて,件の別テイクですがアルバムの完成度も落ちますし印象も変わるのを承知で,やっぱり聴いてみたい,という誘惑に負けています。別テイクなしは青春の思い出で別テイクありは大人になってからの思い出ということで…。