
『キャノンボール・アダレイ・イン・サンフランシスコ』批評と来れば,世評的にはどこもかしこも“ファンキー”キャノンボールの“本領発揮盤”ばかり。
事実その通りである。管理人も大好きな“ファンキー”キャノンボールが『キャノンボール・アダレイ・イン・サンフランシスコ』の中にいる。大絶賛である。
しかし,何かが足りない…。『キャノンボール・アダレイ・イン・サンフランシスコ』の大絶賛には,何か肝心なことが欠落した思いがつきまとう。言い得ていない。しかしそれが何なのかは自分でもよく分からなかった。
そんな引っ掛かりを感じながら聴いたマイルス・デイビスの『マイルストーンズ』と『カインド・オブ・ブルー』。
喉に刺さった魚の骨がやっと取れた! そうなんだ! 『キャノンボール・アダレイ・イン・サンフランシスコ』におけるキャノンボール・アダレイの聴き所は“ファンキー”キャノンボールではなかったんだ。そうなんだ!
ズバリ『キャノンボール・アダレイ・イン・サンフランシスコ』の真実は「マイルス・デイビスの音造りが貫かれたライブ盤」である。
考えてみれば『キャノンボール・アダレイ・イン・サンフランシスコ』におけるキャノンボール・アダレイは,マイルスのバンドを卒業してまだ数カ月。マイルス・スクールの音造りが色濃い。
意識したのか無意識なのか,キャノンボール・アダレイは自分のバンドを作るにあたってマイルス・スクールの手法を用いている。マイルス・デイビスは,メンバーから必要なものだけを抽出してバンド・サウンドを作ってゆく。その手法を『キャノンボール・アダレイ・イン・サンフランシスコ』の中で真似ているのだ。
コルネットのナット・アダレイ,ピアノのボビー・ティモンズ,ベースのサム・ジョーンズ,ドラムのルイ・ヘインズの何と生き生きとした演奏なのだろう。
それらバンド・メンバーの名演を聴きつつ,本流である“ファンキー”キャノンボールを聴く。これである。

ノリと熱気の溢れたこのライブ盤は,音楽的にも最高レベルだし,スイング大会しているし,もはや誰も止めることのできないお祭りライブ。こんなに楽しいジャズ・ライブもそう多くはないだろう。
とことんHOTとあくまでもCOOLなコンフュージョン。『キャノンボール・アダレイ・イン・サンフランシスコ』の“名演の陰”に“恩師”マイルス・デイビスの存在を忘れてはならない。
マイルスの影響を一切考慮せずに楽しむ『キャノンボール・アダレイ・イン・サンフランシスコ』は永遠に95点止まりであろう。
2人の繋がりが初めて分かって「点が線」→100点満点。
マイルス・デイビスの視点で聴くキャノンボール・アダレイの本質“ファンキー”が最高なのである。
01. This Here
02. Spontaneous Combustion
03. Hi-Fly
04. You Got It!
05. Bohemia After Dark
06. Straight, No Chaser
(リバーサイド/RIVERSIDE 1959年発売/VICJ-5165)
(ライナーノーツ/ラルフ・J・グリーソン,オリン・キープニュース,岡崎正通)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/ラルフ・J・グリーソン,オリン・キープニュース,岡崎正通)
(紙ジャケット仕様)
コメント一覧 (2)
今回のレビューの作品ですと、「ボヘミア・アフターダーク」、「ストレート、ノー・チェイサー」、「ジス・ヒア」などのナンバーが好きですね。特に、ボヘミアの早吹きは、堪らないです。
おっ,キャノンボール・アダレイ好きなんですね〜。2008年から5年間で30枚は頑張りましたね〜。
私はホームズさんからすると邪道なファンだと思います。キャノンボールと来ればWRを連想します。ジャコとザビヌルの影響です。当然ショーターがとどめなのですけど。
でもキャノンボール個人としては『イン・シカゴ』『イン・サンフランシスコ』がとどめであり,キャノンボールの後期エレクトリック期を聴くぐらいならシューターなのです。
『イン・サンフランシスコ』のファンクネスは天才ですね。【ボヘミア・アフターダーク】【ストレート,ノー・チェイサー】【ジス・ヒア】での早吹きは,ほんと堪らないですね〜。