
この持論は揺るがない。管理人個人の所有データと経験値をこれまで幾度となく試してきた。だから「人間性は音楽を裏切らない」し,その逆もしかり…。
と言うことになると“破滅型人間”チェット・ベイカーには自然と足が遠のいてしまう。だから人並みには聴いているがチェット・ベイカーを殊更愛聴してはいない。
だが,そんな聴き方をしているから,たまに聴くと「エラクイイ」と思う瞬間にブチ当たる。
『THE TRUMPET ARTISTRY OF CHET BAKER』(以下『トランペットの芸術』)の場合がそうであった。
『トランペットの芸術』は,チェット・ベイカーがウエストコースト・ジャズの「スター街道」を歩み始めた頃の「寄せ集め作品集」である。
“天才”と未来を嘱望されていた時代のチェット・ベイカーは意外にもハイノート連発のトランペットであり,中低域中心のまろやかなトランペットの印象からは外れる演奏であって,これをブラインドで聞かされたらチェット・ベイカーだとは分からない。外す自信満々である?
それくらい,いつもの印象とは異なる『トランペットの芸術』を聴いて「人間性が音に出る」「人間性は音楽を裏切らない」を改めて実感した。
チェット・ベイカーは「廃人」である。しかし,チェット・ベイカーのディスコグラフィには,彼が「廃人」になる以前の“天才”の音楽も多く残されている。

『トランペットの芸術』は,こじつけではなく『トランペットの芸術』だと思う。
01. I'M GLAD THERE IS YOU
02. MOON LOVE
03. MOONLIGHT BECOMES YOU
04. IMAGINATION
05. LITTLE MAN YOU'VE HAD A BUSY DAY
06. GOODBYE
07. ALL THE THINGS YOU ARE
08. NO TIES
09. HAPPY LITTLE SUNBEAM
10. BEA'S FLAT
11. RUSS JOB
12. TOMMY HAWK
(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1955年発売/TOCJ-6371)
(ライナーノーツ/都並清史)
(ライナーノーツ/都並清史)
コメント一覧 (2)
『管楽器は“人間性が音に出る”』とは、小生も同感です。その傾向は、ことに「トランペット」に顕著のような気がします。
「トランペット」は、奏者自身の「息継ぎ・長短・強弱」によって「音域」や「抒情」的な響きがかなり異なるような気がします。それは他の管楽器よりも「表現のバリエーション」が豊かであるということでしょう。
奏者の「息継ぎ・長短・強弱」を通して、奏者自身のフィジカル、スピリチヤル両面の「コンディション」や、「人間としての内面の動き」が映し出されるということでしょう。
ピアノなどの鍵盤やヴァイオリンなどの弦の操作だけでは、なかなかそうは行かないような気がします。
その最たる例であり、同時に“究極の表現”と言えるものが、「ミュート」をかけた「マイルスSOUND」と言えるのかもしれません。
エヴァンスも寺井尚子も、この「人間としての内面の動き」の表現においては、脱帽せざるをえないと想います。
「奏者」の「息継ぎ」の問題は、つまるところ「息をすること」すなわち、「生きる」そのことに直結しているからかもしれません。
「息」は「自(みずか)」らの「心」と書き、「気」に通じているからでしょうか……。
含蓄があるコメントでした。『「奏者」の「息継ぎ」の問題は、つまるところ「息をすること」すなわち、「生きる」そのことに直結しているからかもしれません。 「息」は「自(みずか)」らの「心」と書き、「気」に通じているからでしょうか』は,shuriさんの人柄がよく表われています。
息継ぎは生きるための心と気なのですね。そこにあるべきミュート。マイルスここにありですねっ。