OH YOU CRAZY MOON-1 “廃人”チェット・ベイカーの晩年については語りたくない。
 管理人の本音はチェット・ベイカーのプライベートだけではなく“ジャズトランペッター”としてのチェット・ベイカーのについてである。

 チェット・ベイカーの晩年のCDは手元には1枚もない。全てがお払い箱行き。そんな中での『OH YOU CRAZY MOON』(以下『オー・ユー・クレイジー・ムーン〜ザ・レガシー VOL.4』)の購入には訳がある。

 それこそ副題=『ザ・レガシー』シリーズにある。そう。『オー・ユー・クレイジー・ムーン〜ザ・レガシー VOL.4』はエンヤが誇る発掘音源集。
 チェット・ベイカーの『ザ・レガシー』シリーズには『VOL.1』から『VOL.4』まで4枚あるが,1枚だけを(【ラヴ・フォー・セール】と【マイ・ファニー・ヴァレンタイン】が聴きたいという選曲の理由で)購入してみた次第である。

 『オー・ユー・クレイジー・ムーン〜ザ・レガシー VOL.4』は録音された1978年頃のチェット・ベイカーは「下り坂」に当たる。トランペットはすでに劣化が始まっている。
 当然,チェット・ベイカーにはその自覚があったことだろう。しかしチェット・ベイカーは,自身の「下り坂」を隠そうとはしていない。“廃人”ゆえに予想できることとして,劣化を止める努力はしなかったのだろう。ダメダメである。しかし…。

OH YOU CRAZY MOON-2 このダメダメの剥き出しが恐ろしい。チェット・ベイカーはここまで落ちてもなんとかなる。いいや,この「枯れ具合」が好みの仕上りなのだ。ビンテージ・ジーンズのような「色落ち」なのだ。雨や風にさらされて小石で削られヒゲが出来る。そんな風合いのトランペットが絶妙であって,この「色落ち」はチェット・ベイカーならでの味。パッと出の天才では絶対に表現できない“色”があるのだ。

 人生,何かを失いながら美しくなっていく。油が抜けてカサカサになったからこそ感じる素材感がある。失って初めて得られる美しさがあるのだ。
 そう。人生はビンテージ…。ジャズはビンテージ…。「色落ち」のジャズは美しい…。

  01. THE TOUCH OF YOUR LIPS
  02. BEAUTIFUL BLACK EYES
  03. OH YOU CRAZY MOON
  04. LOVE FOR SALE
  05. ONCE UPON A SUMMERTIME
  06. MY FUNNY VALENTINE

(エンヤ/ENJA 2003年発売/GQCP-59037)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/キャロル・ベイカー,田中英俊)

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