
しかし,どうしてもアルバム・タイトル“SOLID”のスリコミが「村田陽一SOLID BRASS」とカブってしまって,大好きな本田雅人を聴きながら,頭の隅っこで村田陽一のトロンボーンを探してしまう自分に気付く。
そう。『ソリッド・ステイト・ファンク』には,管理人の愛してやまない本田雅人が,不在がち,なのである。
無論,本田雅人は主役である。本田雅人のアルト・サックスがずっと流れている。なのに本田雅人の“ハイパー・サックス”に身が入らない。
それどころか脳内で本田雅人のアルト・サックスを“認識する度に”喪失感に襲われてしまった。
本田雅人の出来が悪いわけがない。曲の出来が悪いわけがない。本田バンドの出来が悪いわけがない。そうではなくて『ソリッド・ステイト・ファンク』では,これまで新作が届く度に感じていた本田雅人の“神懸り”が降りてこなかった。
そう。“雲の上の人”だった本田雅人が,地上で“等身大の演奏”でルーティングしているようにしか聴こえないのだ。ゆえに喪失感 →“オレ様”本田雅人が,不在がち,なのである。
本田雅人のディスコグラフィの中には,幾らかの駄盤が混じっている。でもそれはそれでOKだったのだ。誰しも時にはブレたりタッキングすることもあるだろう。
本田雅人は“天才”なのだから,三振あるいはホームラン,当たり外れも当然多いと思っている。キース・ジャレットにもパット・メセニーにも駄盤の1枚や2枚はあるのだから…。
しかし,同じ駄盤を作ったにしてもキース・ジャレットの『RESTORATION RUIN』しかり,パット・メセニーの『ZERO TOLERANCE FOR SILENCE』しかり,チャレンジ精神に似た「サムシング」が感じられた。
だから管理人は『RESTORATION RUIN』と『ZERO TOLERANCE FOR SILENCE』を頑なに拒絶することができる。
一方,本田雅人の『ソリッド・ステイト・ファンク』には「サムシング」が感じられない。何かが足りない。初めて聴いたはずなのに,もう何回も聴いたことがある感じ。
「一番搾り」麦汁ではなく「二番搾り」のようなハイパー・サックスが“フュージョン・ファンク”しているだけの『ソリッド・ステイト・ファンク』を拒絶することもできない。欲求不満になってしまう。
『ソリッド・ステイト・ファンク』は,書き下ろしではなく,お蔵入りしていたアウト集? これって本田雅人ファン歴18年にして,初めてブチ当たった本田雅人の“賞味期限切れ”?
『ソリッド・ステイト・ファンク』を本田バンドの「再結成作」のように受け止めてしまった。
管理人なりに「思い当たる節」がある。きっと『ソリッド・ステイト・ファンク』の低評価の原因は,前作『ACROSS THE GROOVE』からの反動なのだろう。

しかし『ACROSS THE GROOVE』における「フォープレイの4分の3」との共演を聴いて,本田雅人の内で生じた「変化の機微」を感じたせいなのだろう。
自分の中で勝手ながら,本田バンドは「完全燃焼」。祝・本田さん「バンド卒業」の妄想ストーリーが出来上がってしまっていた。
もう本田バンドの本田雅人はお腹一杯。満腹のゲップ。次なる共演は「リッピントンズ」か「イエロージャケッツ」か「スパイロジャイラ」か?の期待の中で届けられた,本田バンドでの『ソリッド・ステイト・ファンク』に,後戻りとか過去の遺産を感じたのだろう。
『ソリッド・ステイト・ファンク』以降,本田さんの新作が6年間も発売されていない。本田さんも新しい「一番搾り」麦汁が出せずにもがいている?
う〜む。この辺の感情は自分でもよく分析はできていない。こんな本田さんの大ファン,他にも多くいるのかな? もしかして管理人1人だけだったら悲しいよなぁ。
最後にここまで書いてあれですが【ロバートの肖像】【SAILING OF TIME】【YOUR BIRTHDAY】の3曲は大好物!
(この3曲が流れている時間だけは)予定調和・最高! 本田バンド・最高! 『ソリッド・ステイト・ファンク』最高?
01. Funky Monsters
02. ロバートの肖像
03. Laughter of Dragon
04. Sailing of Time
05. 僕のこいのぼり
06. Your Birthday
07. A Week
08. Triangle Moon
09. Walk The Walk
10. Angel Smile
(ソニー/SONY 2009年発売/SICL-224)
コメント一覧 (4)
これまでの本田さんは、超絶技巧だけでなく、音楽に明るさや楽しさや美しさがいつもありました。更には夏の惑星の頃、和泉さんが居たスクエアが、本田さんの才能を一番POPに分かりやすく引き出せてたと思います。
アマゾンレビューの高評価や管理人さんの「曲は良い」の評価を拝見すると、感傷的なのは自分だけかとも思うのですが、この作品を聴いても、音楽として何がどう楽しいのか分からないのです。
進化も進み過ぎると、バンド仲間同士と同様、アーティストとファンも、もう同じ場所に居られなくなるのかも知れませんね。
まあそれも仕方ないこと。当時の音楽を聴き、コピー演奏でもして、楽しかったあの頃の気持ちに時々戻れるなら、それも良いかと思うようにしてます。
同志ですね。本田さんが好きすぎるから,感じたくないものを感じてしまった,のだと思っています。良く言えば変化なのでしょうが,なんか本田さんらしくない影武者のようなサックスにワクワクドキドキを無理やり感じようとした自分を諌めるのに時間がかかりました。こんな感覚は『SOLID STATE FUNK』が初めてでした。
なつさんが述べておられる通り「明るさや楽しさや美しさ,そしてPOP」が本田さんの魅力です。超絶なんて二の次ですし。基本的に本田さん自身がスクェアのサウンドを一番楽しんでいるのが伝わっていましたし。
本田さん自身が純粋に楽しめる音楽を始めてくれたら,同じ場所に戻って来なくともそれでいいと思っています。それが駄盤であっても今度は受け止められる気がしています。
なつさん,その時が訪れるまで本田さんを一緒に応援し続けましょうよ〜。
本田さんがスクエアを楽しんでたっていうの、本当にそう思います。
一部でスクエアと確執とか言われたりしてますけど(笑)
Carry Out の Running High で本田さんの Gt ソロの出だし、安藤さんの いとしのうなじ のソロ出だしの生き写しなんですよね。楽しく強いメッセージ。キライでそんなことするワケないです。
さて、この作品。本田さんにしてみれば、これまでと同じようなものばかり作っても仕方ないのは確かでしょうね。今回の斬新な引き出しを私は楽しめなかった。でも本田さんがこれからも開けて行く別の引き出しの中にも、私も楽しめるものがあるかもしれない。そうですね。それを待ちながら応援したいですね ^^
本田さんはスクェア大好きです。入団する時も,安藤さんが断れるのを覚悟で誘ったら,スクェアのような音楽をやりたい,とのお言葉で一発OKだったようですし,退団後のニセスクェア=VOEまで始めたお方ですから〜。
『Carry Out』の【Running High】もその通りですよね。
そして「今回の斬新な引き出しを私は楽しめなかった。でも本田さんがこれからも開けて行く別の引き出しの中にも、私も楽しめるものがあるかもしれない」もその通りです。
本田さんの新作を待っている間,私はスクェアの方に全力投球したいと思います。