
この事実さえ伝われば,他につべこべ言う必要はない。渡辺貞夫のブラジルと来れば“鉄板”の「名盤保証付き」。
「サッカー王国」として名高いブラジルは,音楽の世界でも「王国」であって,世界的に有名なボサノヴァだけでなくミナスの例しかり。地方地方で独自の発展を遂げており,奥深い。
『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』で渡辺貞夫と共演したのは,ピアノのファビオ・トーレス,ギターのスワミJr.,ベースのパウロ・パウレッリ,ドラムのセルソ・ヂ・アルメイダ,パーカッションののクレーベル・アルメイダ,ヴォーカルのファビアーナ・コッツア。
ブラジルでは超一流どころなのだろうが,管理人的には“無名のタレント集団”のサイドメン。大物不在でちょっぴり残念だったのに,聴いて納得 → さすがは「王国ブラジル」 → さすがは渡辺貞夫・セレクテット!
「渡辺貞夫の考えるブラジル」を自然体で見事に表現している。この力の抜け具合が最高である。ナベサダの“お耳”は実に素晴らしい。
…とは言え,管理人が『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』に感動するのは『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』の中の“ブラジル色”ではなく“渡辺貞夫色”についてである。
渡辺貞夫のブラジル録音。身体は25年振りかもしれないが,心は25年振りではない。この25年間,渡辺貞夫の心には常に“ブラジルの音楽魂”が宿っていた。ナベサダのDNAの中で鳴り続けていた“ブラジリアン・メロディー”があった。
読者の皆さんもお気付きになっていますよね? アルバムの中に必らず(それがアフリカであっても)ブラジリアン・フレイバーが混じっていたことを…。
そう。いつだって渡辺貞夫はチャーリー・パーカーし続けてきたし,どこにいても渡辺貞夫はブラジルし続けてきた。だから東京でもNYでもLAでも渡辺貞夫がアルト・サックスを吹き鳴らせば,そこに“ブラジルの香り”が充満していた。
極論を語れば『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』では単純にその比重が増しただけなのだ。

『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』を聴くという行為は「世界一美しい音色と口ずさみたくなる優しいメロディー」を持つ“世界のナベサダ”の音を聴くという行為。
だからできれば『オウトラ・ヴェス −ふたたび−』は,拝聴をやめて“さらっと”聴き流してみてほしい。こんなにも“世界のナベサダ”の音をストレートに感じるアルバムは久しぶりなのだから…。
01. OUTRA VEZ
02. PELOURINHO
03. REQUIEM FOR LOVE
04. COLOR OF SPRING
05. BON DIA 80
06. CABO VERDE AMOR
07. TEMA PARA E NOVO VENTO
08. NATAKA MAJI
09. SIMPATICO
10. SOLITUDE
(ビクター/JVC 2013年発売/VICJ-61685)
コメント一覧 (4)
相変わらず、カッコいいナベサダ!
個人的には「オレンジエキスプレス」しか知らないんですが、(歳がばれます)この新譜はちょっと聞いてみたい気がします。
ブラジルから想像するのはボサノバなんですが…どんな音源が入っているのだろう??
と思ってます
相変わらず,カッコいいナベサダ!
『OUTRA VEZ』はボサノヴァではないブラジルです。普通にエレクトリックな楽器を使ってアコースティックな音を出しています。
文章では伝えにくいのですが,それこそ聴いてみたら「あっ,ブラジルだ」と感じられると思いますよっ。試聴だけでもお奨めしたいです。
【オレンジエキスプレス】は名曲ですね。今でもライブで演ってくれる時があるみたいですよっ。
視聴だけでもおすすめ…とあったので近日中にお店に行ってみようかと思ってます。
渡辺貞夫さんの所に書くのはあれなんですが…私はサックスプレイヤーを挙げるとなったらナベサダさんの他に本多俊之さんの名も挙げるのですが…。
セラピーさん的にはどうなんでしょう??
『OUTRA VEZ』。是非聴いてみてください。
さて,本多俊之さんですが,あのソプラノは本当に素晴らしいです。コマーシャル路線のものでも感じるジャズ・スピリッツ。そのうち本多さんの記事も書こうと思っています。