
しかし,マイケル・ブレッカーのテナー・サックスを前にすれば,世界的な名手=エディ・ゴメスとスティーヴ・ガッドは“脇役”に成り下がっている。
そう。チック・コリアが,マイケル・ブレッカー以外は“眼中にない”感じでピアノを弾き倒している。「鬼気迫るピアノ」とはこんな感じを指すのだろう。
エディ・ゴメスのベース・ソロが素晴らしい。スティーヴ・ガッドのタイトなのに跳ねるビートが素晴らしい。
しかし,それってチック・コリアとマイケル・ブレッカーの“手に汗握るインタープレイ”の「息抜き」あるいは「ブレイク・タイム」。完全なる「蚊帳の外」での名演であって,次に来るチック・コリアとマイケル・ブレッカーのインプロビゼーションのお膳立てに終始している。
全体にクラシックの香りが漂う,息苦しい展開を“豪快にブチ破る”マイケル・ブレッカーのテナー・サックスが絶唱する。
正確なピッチで“雄叫び”を上げるマイケル・ブレッカーが,無表情な「組曲」を彩っていく。このテクニカルなブローが唯一無二の「マイケル節」。フレージングのアプローチが「新世代のサックス」していて「マイケル節」が耳から離れてくれなくなる。
管理人の周りには『スリー・クァルテッツ』と来れば,チック・コリア買いではなくマイケル・ブレッカー買い,が多いという事実。
マイケル・ブレッカーに“触発された”チック・コリアの“ジャズ・ピアニスト”としての個性が爆発している。こんなに“本気度の高い”チック・コリアは『スリー・クァルテッツ』以外では聴くことができない。
ジョン・コルトレーンをアイドル視するマイケル・ブレッカー流「シーツ・オブ・サウンド」に対峙するため,チック・コリアのテクニカルなピアノの“ゴリ押し”が圧巻。和音を垂直にガンガン叩き降ろすようなバッキングを執拗に重ねていく。
それなのにチック・コリアのテクニカルなピアノが,エディ・ゴメスのベース,スティーヴ・ガッドのドラムと調和するのは当然として,マイケル・ブレッカーのテナー・サックスとも調和する神業の披露。
チック・コリアは,メジャーでキャッチャーな印象的な美メロ弾きにして,バッキングだけでもメロディーを奏でることのできる“ジャズ・ピアニスト”であった。
そう。『スリー・クァルテッツ』で語られるべきは,チック・コリアとマイケル・ブレッカーとの“運命の出会い”である。

「組曲」ゆえに,本来の性質は繰り返し聴き込むべきアルバムだと思うが,張りつめたテンションで演奏されるインプロビゼーションによる「組曲」であって,聴き終えるとぐったり。余りのエネルギー消費に,もう1度最初から聴き直す気がおきなくなる…。硬派すぎるのだ…。ハードすぎるのだ…。
だ・か・ら管理人は『スリー・クァルテッツ』を,本編の4トラック【QUARTET NO.1】【QUARTET NO.3】【QUARTET NO.2−PART 1】【QUARTET NO.2−PART 2】を飛ばしてボーナス・トラックから聴き始める。
チック・コリアとマイケル・ブレッカーとのデュオ=【CONFIRMATION】が特に良い。チック・コリアはピアノではなくドラムでジャムっている。ほどよく力の抜けた雰囲気。
マイケル・ブレッカーは7コーラスも吹いてドラムと4バース・チェイスが1コーラス。6分間連続で吹き続けているのだが,そのどこを切ってもコード進行をきっちりと感じさせる素晴らしいフレーズの連続である。
これが管理人の『スリー・クァルテッツ』攻略法。ただし,まだ最終ステージまでは攻略できていない。
01. QUARTET NO.1
02. QUARTET NO.3
03. QUARTET NO.2 - PART 1 (dedicated to Duke
Ellington)
04. QUARTET NO.2 - PART 2 (dedicated to John
Coltrane)
05. FOLK SONG
06. HAIRY CANARY
07. SLIPPERY WHEN WET
08. CONFIRMATION
(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1981年発売/UCCU-6220)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/岡崎正通)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/岡崎正通)
コメント一覧 (4)
このアルバムは、購入してもう5年くらい経つのかな。
未だに聴きたくなります。
チックコリアエレクトリックバンドが好きで、チックに接近したのに、結果このアルバムのような、モードチックなサウンドの方に軍配が上がってしまった。
ここにもやはり、キャッチーと芸術の攻め際があるのだろうか。
チック・コリアのエレクトリック・バンドの洗礼を受けたとは同世代ですね。そして徐々にモード・チックなサウンドの方に流れるパターンも私と似ています。
チックのキャッチーと芸術の攻めぎあいをこれからも楽しみましょう。
Chick Coreaフリークとしては超今更ですがやっと買いました。
しかしまたバケモノアルバムを買ってしまいました。その道の職人達がが一堂に会するわけです。1人でも欠けたらこの緊張感やシリアスな雰囲気は出ないことでしょう。
全体にダークな雰囲気が漂っているにも関わらず、何故か流れるように進行して行く様がまたアンバランスで素晴らしいです。
今回のGaddも【Friends】と同様な“本気度”を感じられるのですが、シリアスさは増してるような気がします。
後にも先にもChick CoreaとMichael Breckerが共演したアルバムはこれと後の【Rendezvous in New York】だけですが、こんなにも素晴らしい組み合わせに限って、音源が少ないのは残念ですね。もっと色んなスタイルの共演体制が聴いてみたかったですね。
バケモノ・アルバム『スリー・クァルテット』ですね。やっぱりチックをここまで本気にさせたマイケル効果でしょう。
「全体にダークな雰囲気が漂っているにも関わらず、何故か流れるように進行して行く様がまたアンバランスで素晴らしいです」がズバリですね。
私もチックとマイケルの共演音源の発掘を渇望しております。いつかは出ると思いますがあとはレコード会社がにらんだタイミングだけでしょう。