27-1 『27』は,キャリアのピークを極めた『24』『25』の“両モンスター”を超えるべく「路線変更」を試みた『26』の延長線上に位置する名盤である。

 情報量の多かった『26』路線の音世界が『27』では,見事に整理されて表現される“歌う”DIMENSIONへと昇華している。
 増崎孝司小野塚晃勝田一樹の3人ユニット=DIMENSIONは,たったの2作,で,またしても違う表情を完成させてみせた。正面の美しさではなく,見返り美人でもなく『27』は,斜め45度の美しさ(by 滝川クリステル)?

 そう。美しいものをそのまま見せるのではなく,角度をつけることによって,欠点を隠し,美しいところを“より美しく”見せるテクニック。「バランス良くバランスを崩す」計算手法は,複雑で難解な楽曲を揃えた『26』での「路線変更」を消化できた成果であろう。

 『27』の成功の秘訣は,音の引き算,にあると思う。このセオリーを詰め込み系の『27』で具現するのだから素晴らしすぎる。単純に音数を減らすとか,間を作るとか,従来の手法を見直すというよりも『27』はユニゾンを多用することで,音の引き算,を実現してみせてくれる。

 特に増崎孝司ギターは,ギターフュージョンだった頃のプレイとは随分様変わりしたと思う。自分が前に出る時は,キーボード小野塚晃アルトサックス勝田一樹も一緒に“担ぎ出す”と表現するしかないような…。

 具体的には小野塚晃キーボードの裏の仕事をカッティングでカバーする。勝田一樹アルトサックスとのユノジンでは,カウンターを当て続ける。要は場を回す,枕木のようなギター・プレイ。全体のバランスを考えて,崩れるか崩れないか,の「計算された崩し」が絶妙すぎる。

 『27』のいい演奏といいアレンジ。でもやっぱり音楽はメロディーである。『27』には2つのキラー・チューンが収録されているので・た・ま・ら・な・い。

27-2 このように書くと,管理人の周りのDIMENSIONファンは(管理人がDIMENSIONデビューからのファンであることが知られているだけに)超絶技巧リターンズの【ONE AND ONE】とライブフィーチャーされた【TRAVELERS】だと予想されるだが…。残念「ハズレ」で〜す。

 『27』は【SEAWIND TO SALOU】と【BLUE SKY】を聴け! DIMENSIONは【SEAWIND TO SALOU】と【BLUE SKY】を聴け!

 増崎孝司の「成熟と変貌」を強く感じた『27』。管理人も増崎孝司と同じ気持ちで,本当に好きすぎて青春を語るのに欠かせない『23』以前のDIMENSIONを,しばらく封印してみようと思っている。
( マスヤンがアルバムにコンセプトを設けなくなった『24』からDIMENSIONは変わってきた発言を受けて。やっぱり『24』! )

  01. One And One
  02. Summer Night Out
  03. Growing
  04. Amnesiac
  05. Blow
  06. Seawind To Salou
  07. Endless Story
  08. Blue Sky
  09. Travelers
  10. Letters

(ザイン/ZAIN RECORDS 2014年発売/ZACL-9077)
(☆スリップ・ケース仕様)
(☆BLU−SPEC CD仕様)

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