
その理由は「エレクトリック・バンド」のアルバムを立て続けに聴いてみれば誰にだって分かる,これが同じバンドなのか?と思えるほどのスタイル・チェンジ。
そう。“所構わず移り気する”チック・コリアの音楽性が「エレクトリック・バンド」を聴き通すだけで体感できる。そして,それがチック・コリアの音楽スタイルそのものなのだ。
“ド派手な”プログレ・フュージョンの『THE CHICK COREA ELEKTRICK BAND』からわずかに1年の出来事である。あの「リターン・トゥ・フォーエヴァー」の解散から7年。満を持して発足させた「ザ・エレクトリック・バンド」から「定冠詞」を外してきた。
そんな「エレクトリック・バンド」の第2作が,そのものズバリの『LIGHT YEARS』(以下『ライト・イヤーズ』)! とにかくライト! とにかく軽い!
売れに売れまくった『THE CHICK COREA ELEKTRICK BAND』のセールスでは飽き足らず?更なる“売れ線”で勝負に出た〜!
言ってみれば『ライト・イヤーズ』はチック・コリア一流の“スムーズ・ジャズ”である。「ポップスと一緒にラジオでかけてもらえそうな曲」を意識した結果としての“スムーズ・ジャズ”である。
“スムーズ・ジャズ”自体が悪いわけでも嫌いでもないのだが,あの「エレクトリック・バンド」が“スムーズ・ジャズ”を演る意味はないように思った。
これが,かの「リターン・トゥ・フォーエヴァー」を超えるための「エレクトリック・バンド」なのか? 超絶技巧を意識的に減速させて“まとまりの良い演奏”に終始している。演奏のダイナミズムが失われている。
ベースのジョン・パティトゥッチとドラムのデイブ・ウェックルとのトリオとしてスタートした「エレクトリック・バンド」であったが,デビュー・アルバムではトラック別にギタリストのカルロス・リオスかスコット・ヘンダーソンが加入した。
『ライト・イヤーズ』では,レギュラー・ギタリストとしてのフランク・ギャンバレとサックス奏者のエリック・マリエンサルが加入して,ついに「エレクトリック・バンド」のメンバー5人が固定する。
しかし,この“むやむや”が分かるかな〜。この“もやもや”が伝わるかな〜。『ライト・イヤーズ』の音造りを分析する限り,フランク・ギャンバレのギターとエリック・マリエンサルのサックスに必然性は感じられない。
チック・コリアのデジタル・シンセの無機質な音を,まろやかに聴かせるための役回りに徹しておりして「エレクトリック・バンド」のバンド・アンサンブルの中に神妙に収まってしまっている。

『ライト・イヤーズ』は“薄味の”「エレクトリック・バンド」。管理人は『ライト・イヤーズ』をほとんど聴かない。
あれ程のバンド・サウンドを持っていたはずなのに…。どうしてここまで“スムーズ・ジャズ”なのだ…。どうしてそこまして“売れ線”なのだ…。理解に苦しむ…。
ただし,この『ライト・イヤーズ』。LP時代の産物でありCD版には3トラック多めに収録されている。【VIEW FROM THE OUTSAIDE】から続くプログレチックな展開に「おお,これぞチック・コリアのフュージョン全開!」なのである。管理人は「エレクトリック・バンド」にこんなハードな演奏を求めていた。アドレナリンの迸りっぷりが素晴らしい。最後に持ち直した。星4つ〜。
まっ,チック・コリアにとってフュージョン・バンドの2作目は“魔の2nd”。駄盤『ライト・イヤーズ』は恒例行事なだけ!
01. LIGHT YEARS
02. SECOND SIGHT
03. FLAMINGO
04. PRISM
05. TIME TRACK
06. STARLIGHT
07. YOUR EYES
08. THE DRAGON
09. VIEW FROM THE OUTSIDE
10. SMOKESCREEN
11. HYMN OF THE HEART
12. KALEIDOSCOPE
(GRP/GRP 1987年発売/VDJ-1090)
(ライナーノーツ/青木和富,久野耕一郎)
(ライナーノーツ/青木和富,久野耕一郎)
コメント一覧 (2)
CCEBが売れ線に手を出したのは、やはり少し残念ですね。
カッコいいことはカッコいいのですが、私達がEBに求めていたものとは少しズレが生じた気がします。
でも裏を返せば、
難解な「デュオ演奏」もこなし
いわいる「どJazz」にまで手を出し
「ソロピアノ」で人々を魅了する
その一方で、今作のような「スムースジャズ」までプレイ出来る。
凄いことは凄いのですが管理人さんと同じく、今はほとんど聞きません
。
ですがカチカチの「Elektric Band」はここまで。
スタイルチェンジが失敗に終わっただけですね。
バンド名から定冠詞を外した『LIGHT YEARS』です。音楽自体は素晴らしいのですが,CCEBの音楽としてはちょっと違うかな〜。
あの時代の記念というか,チック・コリアとしては我は出していませんが〇〇欲が出たのでしょうね。
10年に一度は聴き返してみる価値のある迷盤だと思います。